こんばんは、Manachanです。連載ブログ「マルチリンガルになる方法」、各論編2)に入ります。
私の言語習得理論は、別名、「5-30-80の法則」といいます。ある言語を母語として育ち、成人した人が外国語を学ぶ場合、その達成度において3つのマイルストーン(目安)を想定します。母語の言語能力を100%とした時、外国語の学習が進むにつれて、
片言レベル(5%)
↓
使用レベル(30%)
↓
習得レベル(80%)
と、進んでいく…今回、各論編2)では、「片言レベル」(5%)を「使用レベル」(30%)に、ランクアップする方法論について書きます。私は、「5%から30%への移行」段階こそ、この連載のハイライトだと思っています。世の中、この段階でつまずき、外国語学習を中止・断念する人が余りにも多いからです。
私自身は、現時点で5ヶ国語できるマルチリンガル(多言語話者)とはいえ、これまで、いろんな言語の習得に挫折してきました。いま思うと、そのほとんどが「5%→30%」の段階で起こっています。その苦い経験を糧に、学習における「態度」や「方法論」を改善してきた結果、今では「一旦やると決めれば、少なくとも30%は必ず達成する」自信がつきました。その経験やテクニックを、皆様とシェアしたいと思います。
どの言語を学ぶにせよ、「30%」を達成するために、私が絶対に怠らないことは、二つ。
1)文字や声調記号を覚える
2)それらを使って、自分のオリジナル文章をたくさん書く。
1)について…英語をはじめ、アルファベット表記の言語を学ぶ場合、文字を覚える苦労は少ないでしょう。また、日本人の場合、漢字をすでに知ってますので、中国語の漢字を苦にする人は少ないでしょう。
しかし、タイ文字、アラビア文字、インドのデーヴァナーガリー文字など、見慣れない文字になると途端に拒否反応を示し、「こんな、ミミズがのたくったような記号、覚えられるか!」といって、最初から諦めてしまう人は多い。例えば、タイに長年住んでいる日本人で、会話は上手にできるのに、タイ文字が読めないという人は少なくありません。
私の学習スタイルは、文字の学習を大変重視します。いくら話せても文字が分からないと、新聞雑誌を原語で読めない、看板に書いてることも理解できない、メールも読めない書けない…そもそも、その言語で社会生活ができないからです。
それに、どんな文字でも、少なくとも漢字を覚えるよりはラクでしょ…と思います。日本で育てば、漢字という、世界でもトップクラスに難解かつ複雑な文字を、すでに何千個も覚えているわけです。私の息子は、7歳で小学1年生ですが、1年生のうち80個の漢字を覚えなくてはなりません。
それに比べて…タイ文字、子音字が44、母音字が32、全部で76しかない!(しかも、ほぼ使われなくなって覚えなくても良いものもある)。1年生の子供が学校で習う漢字数より少ないんだから、良い歳した大人なら覚えられるはずじゃんと思うのです。あとアラビア文字、インドの文字…数え方にもよりますが、少なくとも、日本人が大人になる前に覚える漢字みたいな膨大な数ではありません。
もっとも、文字を覚えてもそれですぐ読めるとは限りません。たとえばタイ語の場合、文字表記と発音が一致しないことも多いし、あと、文章のなかで単語と単語がどこで切れるか等々…結構な数の文を読んだり、書いたり、「場数」がそれなりに必要になります。
日本語と同様、タイ語の文は単語の切れ目を見つけるのに慣れが必要。
あと日本人の場合、日本語にない「声調」のある言語を学ぶのに苦労する方も多いですね。中国語をはじめ、タイ語、ベトナム語等々…
あと、特に中国語やベトナム語は、日本語にない発音が多い上に、厳密に正しい発音をしないと通じないとか、別の意味になってしまうことも多いので、初学者にはその苦労は避けて通れません。それも、正しい文字・声調記号とセットで、覚えなければなりません。
どの言語も、そう簡単ではありません。でも、やればやるだけ、成果が出ます。それなりの時間をかけて、文字、声調記号、それに対応する発音を覚え、語彙数が500~1000程度に達した頃に、「到達度30%」のラインが見えてくるはずです。
そこに到達するスピードを早める方便として、私は、「自分オリジナルの文章をたくさん書く」ことを心がけています。語学の上達なんてシンプルなもので、結局、「アウトプットした回数と量」で決まりますから。
もちろん、初心者が書いても当然間違いだらけなので、ネイティブの先生に添削してもらう必要があります。その意味で、マンツーマン式あるいは少人数制の語学学校に行くか、あるいはネイティブの先生を見つけて教えてもらった方がいいですね。
私の場合、「習熟度30%」の達成基準として、「次の文章を書けるかどうか?」を、一つの目安にしています。
『マックスコーヒー 故郷の味』
私は千葉県の出身です。私が10歳の時、初めて口にしたコーヒーは、「マックスコーヒー」・・・これは千葉県と、隣の茨城県でだけ売られています。一缶あたり、約30グラムの砂糖が入っている、おそらく日本一甘いコーヒーです。
私が千葉に住んでいた頃、マックスコーヒーは日本中の誰もが飲む、ありふれた普通のコーヒーだと思っていました。でも大人になり、東京に引っ越すと、人々はマックスみたいな激甘コーヒーをあまり飲まず、甘さ控えめのコーヒーを好むことに気が付きました。都会の人は健康志向なのでしょうね。
たまの休みに、千葉の実家に帰る時、マックスコーヒーの自動販売機が見えると、ついつい買ってしまいます。そして一服、甘い!!!!これぞ、故郷の味。
(注.今では、マックスコーヒーは、ジョージア・マックスコーヒーになり、東京都内でも買えるようになっています。)
タイ語で書いたのが、これ…(学習開始後、5か月半後に執筆)
ベトナム語で書いたのが、これ…(学習開始後、3か月後に執筆)
こういう文章を、辞書ひきながらでも書けるようになれば、不完全とはいえ、一定レベルの読み書きはクリアし、言葉を「使える」レベル…「習熟度30%」近辺に達したとみなして良いと思います。
また、最近はどの国でもスマホ、PCの使用頻度が増えているため、「外国語の文字をタイピングできる能力」も大事になってきました。
タイ語のタイピングができれば、たとえばバンコクでタイ人とスマホで連絡とりながら待ち合わせすることもできるし、美味しい店をスマホで検索することがもできるわけで…行動様式がぐっと、現代人っぽくなります。
私のPCに、タイ語のキーボードシールを貼ったら、入力作業がラクになりました。
到達度30%になれば、外国で働くことも、なんとなく視野に入ってきます。例えばの話、バンコクで、「主に英語を使うけど、タイ語でのメールやりとりが少しだけ発生する職場でのオフィスワーク」があれば、今の私ならこなせると思います。あと数か月頑張れば、ベトナム語でそれをやることもできそう…活躍の場が世界に広がりますね。
とはいえ、「タイ人のお客さんとタイ語でやりとり」するとか、「大量のタイ語の資料を読みこなして仕事」するとか、「タイ語の経営会議をこなして、タイ人の部下に指示する」ような職場は、今の私にはさすがに無理です。それには、「習得レベル」(習熟度80%)が必要でしょう。
そのレベルにいかに達するのか・・・次回のエッセイ(各論編3、最終回)で書きます。お楽しみに。
2016/2/17補足…各論編1)で、「英語をマスターしてから次の言語に挑戦」というアプローチは効率悪いと書いた通り、我々マルチリンガルの言語学習は、「ゼロから積み上げ」ではなく、「各言語の共通部分をつなげていく」アプローチをとります。
極端な例かもしれませんが、その典型例として、私がいま使っている「タイ語、ベトナム語共通ノート」を紹介します。これは、「ベトナム語の単語を新たに覚える時に、同じ意味の言葉をタイ語でも書いてみる、知らなければ辞書で調べてみる」という趣旨でつくっています。これにより、タイ語とベトナム語で共通する部分を見えやすくします (注.現時点ではベトナム語の語彙数が少ないので、ベトナム語からタイ語は何とかできても、その逆は難しいです)。
5言語、6言語、或はそれ以上できる人が、世界には結構います。彼らマルチリンガルが新たな言葉を覚える時、意識的または無意識的に、このような「共通部分をつなげる」アプローチを取っているはずと思います。
タイ語とベトナム語は、そんなに近い言葉とは思わないけど、英語、ドイツ語、オランダ語のように相互に近い言語同士なら、「2つか3つ、同時に覚え」てもいいんじゃないかなと思います。
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