発展都市「柏」の南北問題

おはようございます。Manachanです。

前回までのブログは、銚子市(人口減っても家賃とれる町)、一宮町(外房の勝ち組都市)と、千葉県ご当地不動産ネタが続きました。これらは、県内でも東京から遠い「地方圏」の話ですが、今回は、「東京に近い千葉」の話題でいきます。

今回とりあげるのは、柏市・・・東京都心30㎞圏。まぎれもない首都通勤圏ですね。

・「柏駅」から、JR上野東京ラインで、東京駅まで直通、最速30分、550円
・「柏の葉キャンパス駅」から、つくばエクスプレス(TX)で、秋葉原まで直通、最速29分、670円。

 

世界最大の人口・雇用機会をもつメガシティ東京から至近距離、という立地の意味は大きく、日本全体の人口が減り続ける昨今でも、柏市の人口は安定して増え続けています。

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柏市は、市制施行から60年を超えましたが、その間、人口が減った時期が一つしかありません。平成23年の東日本大震災・福島原発事故に伴い、柏市周辺で比較的高い放射線量が観測され、それが全国に報道された影響で、ファミリー層の転入が鈍り、1500人ほど減った時期があります。しかし、平成24年5月以降はV字回復、以降3年間で7000人も増えています。

震災の影響で、人口増加から減少に転じた千葉県の都市は3つ(柏市、我孫子市、浦安市)ありますが、この3市の中で、人口が回復したのは柏市だけです。

東京都心アクセスがはるかに便利な浦安市や、地価・不動産価格の安い我孫子市を差し置いて、ひとり柏市が回復したのはなぜか?それは、東京圏における人口流入が、「開発余地の大きさ、利便性と不動産価格のバランス」で決まるからだと思います。思うに、こんな理由ではないかと、

・浦安市には住宅の開発余地が少ないが、柏市にはたくさんある。また浦安市と比べて、柏市には庶民層が無理なく買える戸建住宅の供給が豊富。

・我孫子市は不動産開発余地が多くて価格も安いが、東京アクセスや商業的発展、教育環境などの面は柏市の方が魅力が大きい。

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柏市の人口動態が力強い理由の一つに、2005年の「つくばエクスプレス(TX)開業」により、市内北部地域に2つの新駅ができ、東京都心部と直結されたことが大きい。その点、柏市と同じ状況にあるのが、西隣の「流山市」です。同市では、3つの新駅ができています。

・2005~15年の間に、流山市の人口は21,548人増加
・2005〜15年の間に、柏市の人口は29,974人増加

つくばエクスプレス:10周年 流山、柏「勝ち組」に 一部地域に開発集中 環境問題や格差浮き彫り /千葉

 

この一帯は、松戸、野田、我孫子、鎌ヶ谷とともに「東葛飾地区」と呼ばれますが、同地区6市のなかで、人口が増え続けているのは流山市と柏市だけ。やはり東京直結鉄道の威力は半端ないのです。また、柏市の場合はTXのほか、JR常磐線が今年3月から東京駅、品川駅直結の「上野東京ライン」に昇格。TXと上東ラインが、東京通勤客を獲得するべく健全な競争をしているおかげで、住宅地としての柏市の魅力がますます上がっています。加えて、中心エリア「柏駅東口」の再開発も進行中。少なくともあと5~10年、柏市の人口が減ることは考えにくいでしょう。

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いま、流山、柏の両市で起こっている現象は本質的には同じで、社会増が自然増に結びつく、「好転・成長都市」のパターンです。

・他地域からの子育て世代の転入で、社会増になる。
・彼らが子供を産むことにより、自然増にもなる。

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千葉県のホームページには、常住人口増加数が月間でトップだった自治体名が載っていますが、いつも「船橋市」、「流山市」、「柏市」が上位に出てきます。最近、この3市を私は、「千葉の三強」と呼ぶようになりました。船橋市は、東葉高速沿線の住宅開発があるし、ベイエリアにも開発余地が大きいから、さすがに強いですね。あと、津田沼南口の「奏の杜」大開発を抱える習志野市や、千葉ニュータウン中央の人気に支えられる印西市も強い。

千葉の三強:船橋市、流山市、柏市
千葉の五強:船橋市、流山市、柏市 + 習志野市、印西市

※)県都・千葉市は、緑区や中央区など人口増加区と、花見川区など人口減少区があって、両者が相殺されて全体的に横ばい〜微増。

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流山、柏、船橋・・・人口増加や発展の影で、地域にはいろんな問題が出ています。前掲の記事にも出ていますが、

TX沿線の利便性が高まる一方、大きな開発計画のない市南部地域を中心に「南北間格差」や「北部一極集中」を疑問視する声は消えない。

 

柏市の場合、ここ10年で「市内の南北問題」が人々の話題に上るようになってきました。もともと、柏市は東京直結鉄道がJR常磐線しかなく、「柏駅」が市域の中央部に存在したおかげで、船橋市等と比べて、比較的均等に発展してきた都市です。

私の子供時代、柏市は「北工南住」と呼ばれていました。

柏市北部:十余二、根戸、機械金属の「三大」工業地帯を擁する、内陸工業の拠点。
柏市中央部:大ターミナル「柏駅」を擁する中心商業地区、かつ行政の中心。
柏市南部: 東武野田線沿いに広がる、光が丘、つくしが丘、新柏など、落ち着いた戸建住宅地・。

この三地域が、お互いの特性を活かしながら、柏市を形づくってきました。当時は、北部に住む人は少なく、南部の方が人口が多かった印象があります。

 

しかし、2005年のつくばエクスプレス開通によって、北部地域が新興住宅地として大発展。一方、すでに成熟した住宅地である南部には大きな開発計画がなく、南北のパワーバランスが崩れつつあるのが、いまの柏市です。

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ここ10年の人口推移を、「北部」、「中部」、「南部」、そして2005年に柏市に吸収合併された「旧沼南町」別に計算してみました。

2005~15年の平均

・北部 年率1.13%増加
・中部 年率0.95%増加
・南部 年率0.26%増加
・旧沼南 年率1.12%増加

 

2010~15年の平均

・北部 年率1.01%増加
・中部 年率0.88%増加
・南部 年率0.04%増加
・旧沼南 年率0.44%増加

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税収が伸び悩む日本。財政の運営はどこも厳しく、自治体が将来の発展のために新規投資できる余地は限られます。柏市の場合は、つくばエクスプレスが通る北部の新都市と、既存の中心商業地である柏駅周辺の、二大「投資対象エリア」を抱え、限られた財源をどちらに回すかが、市政上の主な争点。「柏市の二大中心」から外れた南部や旧沼南町エリアに大きな財源を回す余裕はない。

特に2010年以降、南部地域の人口増加がピタリと止まったのが気がかりです。このままでいけば、隣の松戸市の常磐緩行線エリアと同様、間違いなく人口減少に直面するでしょうが、残念ながら、地域の魅力を上げるための公共投資ができにくい状況。

 

数年前、こんなことがありました。旧沼南町(広義の「柏市南部」と呼んでよいエリア)で、「手賀の杜」という大規模な戸建住宅地開発があり、就学年齢の子供の数が増えましたが、このエリアに新しい小学校を建てる予算がなく、多くの家庭は仕方なく、1.5㎞以上離れた「風早北部小学校」に通わせました。この学校は校庭も狭く、通学路に歩道もろくにない環境なのにマンモス校化してしまいました。

ほぼ同時期、柏市北部の、TX「柏の葉キャンパス」駅近くでは、2012年に柏の葉小学校が新設されました。ここは、「外国語教室に対応した国際交流室」や「学年ごとにユニット化した教室配置」など最新の設備が特徴で、東京山の手のような今風の学校。しかも、その隣に中学校が新設される予定で、首都圏各地からニューファミリーを呼び込む体制がどんどんできています(リンク)。

それを横目にみている、柏市南部住民からすれば、「なぜ、北部ばっかり優遇するの?」という声になるわけです。TX沿線は裕福で高学歴な住民も多いからなおさら、南北問題になりやすい構図。

 

この問題、一朝一夕には解決しないでしょう。一つ明らかなことは、公共投資に期待できないので、望みの綱は民間投資しかありません。その点でいうと、旧沼南町地区に来春オープンする、日本最大規模の「アリオ」ショッピングセンターだけが、南部地域浮揚の唯一のネタでしょう。

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ショッピングセンターは、東京直結鉄道の新駅や、駅前再開発に比べると人口動態上のインパクトは弱いと思いますが、それでも、空き地の多い沼南町地区に民間投資を呼び込んで、柏市南部の利便性や都市環境を改善していく他に、方法がないのだと思います。

日本に珍しく、人口増加を続ける発展都市・柏市。贅沢な悩みかもしれませんが、願わくば、各地域がバランス良く発展して欲しいと思います。

 

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コメント

  1. toda より:

    松戸市も震災後3,4年間は人口が減少していましたが2014年からは増加してます。
    常住人口、14年は+約1400人、15年は+約2600人、16年は+約2500人、17年は11月1日時点で2011人のようです。
    2014年1月1日~17年11月1日までで+8510人です。
    最近発表された公示地価、柏市の住宅地で下落率全国1位の場所があったらいしです。

  2. toda より:

    松戸はあと約1500人で49万人なるようです。
    市川市も最近すごい勢いで松戸の人口に追いつきそうです。

    1. mana33chan より:

      はい、松戸市の人口動態も元気になりましたね。同市内にはアパート持ってますし、今後の発展を期待します。

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