2019年 3月 の投稿一覧

相場の2割増しで海外物件買っていく日本人

こんにちはManachanこと鈴木学です。前回に引き続き、今回も「日本人のイケてない海外不動産買い」に関して、がっつり辛口のコラムを書きます。   本題に入る前にまず、一つ喜ばしい出来事がありました。数年前からアメリカ不動産を日本人で紹介していたある業者が、「当社はこれまで買取転売をやってきましたが、お客様の投資利益を考えて仲介にシフトしました」との報告をくれたのです。 その会社がアメリカで買取転売やっていた2014~15年頃の状況を、私は知っています。「競売やショートセール(任売)で安く出た中古物件を、現地のパートナー業者を使って再生して、自社保有して賃貸に出す。それを日本の客向けに投資物件として販売し、日本語で管理サービスもやる」というビジネスモデルでした。 販売する際、当然ながら、売値に自社利益を乗せるわけですが、その利幅は業界標準からみて、控えめなものでした。「リスク取って手金出して物件を再生」 して、「言うこときかないアメリカ人業者の仕事を監修 」 して、「販売経費かけて、決断が遅くてその割に細かい注文の多い日本人客を相手に」売り、「契約書の説明や送金サポート、税務申告の手配などまでお手伝いする」 という業務の手間と苦労を考えた時、約15%という利幅は極めて穏当だと私は思いました。同じモデルの商売なら普通は20%以上乗せるのが当たり前だし、50%近い利幅を乗せて涼しい顔で売る業者が居るのも知ってましたから…   でもその業者は、買取転売の商売を数年やるうちに、悟りました。「たとえ15%でも、利益を乗せてお客様に売ってしまうと、投資として成功するのが難しくなります」。 それでどうしたか?「商売の難易度は格段に上がりますけど、仲介として、数%の手数料をいただくモデルに変えました。これだと収益物件を市場価格で買えるので、弊社から買ったお客様が損するリスクは少なくなります」…なんて素晴らしい決断!心の底から賛同したのは言うまでもありません。
テキサス州戸建(償却節税向き物件)
ところで、2016年に入ったあたりから、日本の不動産業者が、テキサス州を中心に大量参入する動きが始まりました。折しも、アメリカ国内は経済も不動産市況も好調で、ほぼ全国的に物件価格が上昇基調。こんな時代に、競売や任売で安く仕入れるなんて普通はできません。日本人に売るネタ(≒快速減価償却ができる築22年以上の木造戸建)を仕入れたければ、通常のマーケット価格で仕入れるしかありません。 通常のマーケット価格で仕入れる…具体的にいえば、地元のアメリカ人が30万ドルで買ってる戸建を、日系業者が30万ドルで仕入れるということです。ま、業者は現金持って実弾買いができますので、運とタイミングが良ければ27~28万ドル位で仕入れられることもあるでしょうが、逆にテキサスあたりでは、複数の日系業者が、「築22年を少し超えた木造戸建」という、アメリカ人が普通狙わないニッチな物件を同時期に仕入れまくってますから、仮に同じ物件をめぐって競合したら、当然、安い値段では仕入れられなくなります。 その後、どうなるか?各社とも商売ですから、ほぼ市場価格で仕入れた物件に、自社利益を上乗せして日本人客に売るわけです。乗せる幅は、会社や都市によっても違いますが、私が見聞する限り、20%前後が標準的なようです。   20%の利益が乗ったものを買う。つまり、地元のアメリカ人が30万ドルで買ってる物件を36万ドルで買うということです。高く買ってる代わりに、売買契約に日本語サポートがつき、日本語で管理してくれて保証家賃も支払われる、何より、日本で節税メリットが受けられるということで、実際たくさんの方が買っています。 私は投資家なので、相場よりも値段が乗った物件は絶対に買いません。ただ、世の中こういう商売はあって良いと思います。普通の日本人が手も足も出ない海の向こうの物件を買いやすくしてくれて、日本語で付加サービスをしてくれる…多少高買いしても、サービスの対価としてお客様が納得できるものであるなら、この商売も持続発展していくのでしょう。   ただ、次の点は気になります。 現地の人が買うより高い値段で売っていることを、業者がきちんと説明しているのか?   ま、100%間違いなく、説明してないでしょうね。その場合、客として気をつけねばならないのは、「元本価値毀損リスク」。つまり、数年先に物件売りたくなった時に、買った値段より安い値段でしか売れないリスクです。   分かりやすくするために、テキサス州ダラスの不動産価格指数(ケース・シラー指数)を使って説明します。 ・2016年初に日系業者経由で買った場合、価格指数(=相場)が「160 」のところ、20%上乗せした値段で買ったら「192」で買うことになる。 ・2017年初に日系業者経由で 買った場合、価格指数(=相場)が「170 」のところ、20%上乗せした値段で買ったら「204」で買うことになる。 ・2018年初に日系業者経由で買った場合、価格指数(=相場)が「180 」のところ、20%上乗せした値段で買ったら「216」で買うことになる。
  ダラスの不動産価格指数が、2013年以来、年率5~10%で上がってきているのは事実です。それでも、20%上乗せ分を価格上昇で吸収するのは、少なくとも3年以上はかかります。 なお、2018年以降、価格上昇のペースが目にみえて鈍ってきていること、直近ではほぼ上昇していないことも、図からみて取れると思います。一番面白くないのは、2018年に「216」で買っちゃってる人でしょうね。直近の価格指数は「187.93 」 。前月比プラス0.03%とほとんど上がってませんから、現時点で売ったら元本割れは確実だし、あと何年待てば損しない価格で売れるのか、予想もつきません。   少なくとも、海外物件買う側が知っておくべきことは、 ・海外不動産を扱う日本の業者は、売値に利益乗せてるケースが多いこと。 ・現地相場からみて、適正価格で売っているかどうかを気にすべきだし、その際、業者の言うことを鵜呑みにしないこと。 もっとも、自分で判断するのは難しいかもしれません。個別相談枠を使ってセカンドオピニオンを得ることはできますので、必要ならいつでもご相談くださいね。  
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日本人にくっついて海外不動産買うのは賢いか?

こんにちはManachanです。今回は少し辛口のコラムを書きます。 私は2011年に、海外不動産投資コミュニティ「アジア太平洋大家の会」を立ち上げて以来8年間、日本人の不動産投資リテラシー向上に尽力してきた自負があります。でも現時点では道半ばどころか端緒についたばかり。私が良いと思うレベルに達するまでは、まだ気の遠くなるような時間と継続的努力が必要な気がします。 なぜそう思うのか?多くの日本人は、これまで、不動産投資を通じて資産を殖やす勉強をしてきませんでした。資産家層でも一部を除いて、投資・資産形成の知恵を十分身につける機会がないまま今日に至っています。そんな環境下で 私は 、海外不動産投資で勝てる日本人を量産すべく孤軍奮闘してきたわけですが、日本全体からすれば私の知名度・影響力は微々たるもの(悲)。恥ずかしながら「砂漠の一滴」くらいの仕事しかできてないのです。 国民の投資リテラシーが相変わらず低いなかで、起こることは、「歴史の繰り返し」…金融緩和で不動産価格が上がれば、不動産投資の素人にオーバーローン組ませてカス物件を売りつけたり、「かぼちゃの馬車」のように不動産業者と金融機関が結託してサブリースつけて売りまくり、挙句の果てに保証家賃の入金ができなくなって社会問題化したり… 似たようなことは以前の時代でも、何度も繰り返されていました。まじでデジャブ感が凄い!マクロでいうなら、日本人は過去の失敗からほとんど学んでないということです。 しかも、投資の舞台が日本というホームグラウンドを離れた海外の話になると難易度が増します。法律や商習慣が違う、言葉が違う、人々の住まい方暮らし方が違う、不動産マーケットの性質も違うとなれば、

多くの人は、「よく分からないから、とりあえず、日本人がたくさん買ってる海外の物件を追随買いしてみよう」となる。そうしたい気持ちはよく分かるのですが、投資・資産保全の視点からすると、これは一番やっちゃいけないことだと思います。

なぜなら、一般的な日本人は海外経験が少なく不動産投資のリテラシーも足りない上に、仲介する業者からして、そもそも不勉強で分かってないケースが多い。お客様にどんな物件を買ってもらえば投資利益が出るのかも分からず、とりあえず売りやすいもの、手っ取り早く儲かるものの販売に走る。

キツイ言い方で恐縮ですが、要は「分かってない人」が「分かってない業者」から「曖昧な判断基準 」 で海外物件を買い、それが積み重なるとどうなるのか?…その帰結は、「海外の一角で、日本人だけの特殊マーケットが形成されtて、身動きとれなくなる」。その典型的な例をいくつか挙げます。

1)日本人の節税買いで暴騰したハワイ某コンドミニアム

ハワイのワイキキエリアは、鉄筋コンクリート(RC)のホテルとコンドミニアムで埋め尽くされています。この構造の建物は、日本の税法上は47年償却になりますので、築47年を超えた建物を個人名義で買えば、9年(47×0.2=9.4、小数点以下切り捨て)で全額快速償却が認められ、所得税の節税・繰延に使えます。実際、築47年を超えた建物に、日本人買いの人気が集まります。 私がみた物件は、築50年余りのRC造ホテル運営中コンドミニアム。オーナーの3分の1は日本人で、その比率が急速に増えています。私の記憶では、3年前は2ベッドルームの売値が50万ドル台だったと記憶していますが、今では80万ドル近辺で売買されているとのこと。現地の相場観ではもはや説明できない価格水準で、この値段で買うのは日本人だけだそうです。 もしこの物件を80万ドルで買い、5~6年後に売りたくなった場合に損切りせずに売るのは、まず不可能でしょう。
 

2)戸建ばかりのテキサス地方都市で木造アパート区分という特殊商品

テキサス州は、究極のクルマ社会。広大な土地に、見渡す限り平屋~二階建の戸建住宅地が並びます。人口が増えて都市が拡大しても宅地開発できる土地がそれ以上に広いため、アパート・マンションといった集合住宅が、都心部の一角以外では成立していません。 そんな「戸建だらけの街」で、果たして何を考えたのか、日本人の不動産業者が節税したい日本人客向けに「木造アパートの区分売り」なる珍商売を始めました。確かに土地が安く建物比率が高いので、日本の税法上の償却は取れるのかもしれませんが、現地視点からみれば「こんなもん不動産じゃない!」シロモノで、アメリカ人に売るのはまず不可能だし、日本人を半ば騙して売り抜ける以外にありません。 しかも、管理組合(HOA)もつくらずに区分売りする悪質なケースもあり、共用部分で入居者が怪我でもしたら、訴訟リスクバリバリでしょう。
投資家視点でいうと、日本人が群がってる買ってる物件には、私はまず手を出しません。元本価値の毀損リスクが怖いからです。

口悪くてすみませんが、「不動産マーケット分かってない人たちが投資目的で持ってる物件」ほど、「いざという時に狼狽売りが殺到して値崩れするリスク 」が大きいのです。

これは日本人だけの現象ではありません。数年前、フィリピンのマニラで、韓国人オーナーがまとめ買いしているコンドミニアムで、北朝鮮がらみの危機が起こった際に投げ売りで相場が崩れたことがありますし、 いま世界中で不動産買いまくってる中国人も一般的な投資リテラシーが高いとはいえず、彼らがまとめ買いしている集合住宅ほど、融資条件やビザ発給条件が変わった際に一気に相場が崩れてしまうリスクがあります。これはオーストラリアやカナダの大都市で、実際に起こってることです。 上記の理由から、海外不動産投資で損しないためには、「他の日本人に追随して買う」のは極力避けるべきだと思います。下手したら「海外版かぼちゃのKUSO物件」をつかまされてしまうことにもなりかねないからです。 残念ながら現時点では、一般的な日本人や、販売業者の投資リテラシーを信頼しない方が良い。それよりも、弊社ホームページ投資家成功塾を使って不動産投資をきちんと勉強して判断力をつけたうえで、筋の通ったことを言ってる人をメンターにした方が数百倍良いでしょう。
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