多くの人は、「よく分からないから、とりあえず、日本人がたくさん買ってる海外の物件を追随買いしてみよう」となる。そうしたい気持ちはよく分かるのですが、投資・資産保全の視点からすると、これは一番やっちゃいけないことだと思います。
なぜなら、一般的な日本人は海外経験が少なく不動産投資のリテラシーも足りない上に、仲介する業者からして、そもそも不勉強で分かってないケースが多い。お客様にどんな物件を買ってもらえば投資利益が出るのかも分からず、とりあえず売りやすいもの、手っ取り早く儲かるものの販売に走る。キツイ言い方で恐縮ですが、要は「分かってない人」が「分かってない業者」から「曖昧な判断基準 」 で海外物件を買い、それが積み重なるとどうなるのか?…その帰結は、「海外の一角で、日本人だけの特殊マーケットが形成されtて、身動きとれなくなる」。その典型的な例をいくつか挙げます。
1)日本人の節税買いで暴騰したハワイ某コンドミニアム
ハワイのワイキキエリアは、鉄筋コンクリート(RC)のホテルとコンドミニアムで埋め尽くされています。この構造の建物は、日本の税法上は47年償却になりますので、築47年を超えた建物を個人名義で買えば、9年(47×0.2=9.4、小数点以下切り捨て)で全額快速償却が認められ、所得税の節税・繰延に使えます。実際、築47年を超えた建物に、日本人買いの人気が集まります。 私がみた物件は、築50年余りのRC造ホテル運営中コンドミニアム。オーナーの3分の1は日本人で、その比率が急速に増えています。私の記憶では、3年前は2ベッドルームの売値が50万ドル台だったと記憶していますが、今では80万ドル近辺で売買されているとのこと。現地の相場観ではもはや説明できない価格水準で、この値段で買うのは日本人だけだそうです。 もしこの物件を80万ドルで買い、5~6年後に売りたくなった場合に損切りせずに売るのは、まず不可能でしょう。2)戸建ばかりのテキサス地方都市で木造アパート区分という特殊商品
テキサス州は、究極のクルマ社会。広大な土地に、見渡す限り平屋~二階建の戸建住宅地が並びます。人口が増えて都市が拡大しても宅地開発できる土地がそれ以上に広いため、アパート・マンションといった集合住宅が、都心部の一角以外では成立していません。 そんな「戸建だらけの街」で、果たして何を考えたのか、日本人の不動産業者が節税したい日本人客向けに「木造アパートの区分売り」なる珍商売を始めました。確かに土地が安く建物比率が高いので、日本の税法上の償却は取れるのかもしれませんが、現地視点からみれば「こんなもん不動産じゃない!」シロモノで、アメリカ人に売るのはまず不可能だし、日本人を半ば騙して売り抜ける以外にありません。 しかも、管理組合(HOA)もつくらずに区分売りする悪質なケースもあり、共用部分で入居者が怪我でもしたら、訴訟リスクバリバリでしょう。 投資家視点でいうと、日本人が群がってる買ってる物件には、私はまず手を出しません。元本価値の毀損リスクが怖いからです。口悪くてすみませんが、「不動産マーケット分かってない人たちが投資目的で持ってる物件」ほど、「いざという時に狼狽売りが殺到して値崩れするリスク 」が大きいのです。
これは日本人だけの現象ではありません。数年前、フィリピンのマニラで、韓国人オーナーがまとめ買いしているコンドミニアムで、北朝鮮がらみの危機が起こった際に投げ売りで相場が崩れたことがありますし、 いま世界中で不動産買いまくってる中国人も一般的な投資リテラシーが高いとはいえず、彼らがまとめ買いしている集合住宅ほど、融資条件やビザ発給条件が変わった際に一気に相場が崩れてしまうリスクがあります。これはオーストラリアやカナダの大都市で、実際に起こってることです。