こんばんはManachanです。今日は妻の実家で、広い庭のモップかけ作業…ちゃんと労働しております。
前回、「東京都心の人口フィーバー」について書きましたが、世の中、話には必ず裏があるものです。住民が増え、子供も増えて小学校の新設・増設に追われる都心周辺とは対照的に、30㎞以上離れた郊外住宅地では高齢化が進み、子供世代も都内に流出、人口減ってシャッター通り増えて、財政が苦しくなる…急速な「衰退・地方化」が進んでいます。
この種の話題で有名なのは「多摩ニュータウン」ですが、首都圏郊外には、そんなの目じゃない位、強烈に衰退している地域が相当数あります。今回は、「高齢化・衰退と戦う東京郊外」の課題と将来展望について書いてみます。今回取り上げるのは、私の生まれ故郷である、
・千葉県柏市と我孫子市
です。お互い隣接した両市、東京駅からの直線距離でいうと、柏駅が28~29㎞、我孫子駅が31~32㎞に位置し、その中間あたりを「都心30㎞ライン」が通っています。この地域では奇しくも、「国道16号線(東京環状)」が30㎞ラインとほぼ重なります。この16号線、私の目には、「東京圏と地方圏を分ける結界」のようにも見えます。
お互い、都心30㎞圏都市である柏市と我孫子市ですが、将来の人口推計では大差がついています。都心30~50㎞圏都市を対象とする「2010⇒30年人口増減率ランキング」で、柏市は人口増加率ベスト6位であるのに対し、我孫子市はワースト9位。2030年時点でも20年前の人口規模をキープする柏市に対し、我孫子市は13%も人口を失うと推計されています。
我孫子市の将来人口減少は、「厳しい高齢化、少子化(若年層流出)」と直結しています。2030年時点の年齢別人口推計によれば、我孫子市は「少子化比率」、「生産年齢人口比率」、「高齢化比率」の全てでワースト10にランクインしています。都心からみて我孫子より一つ遠い「茨城県取手市」も同じ傾向を示しています。
都心距離の面で大差ない両市がなぜ、人口面で差がつくのか、理由は二つあります。
・柏市が地域中心地として大きな都市・商業機能を持っているが、我孫子市にはその要素がない。
・柏市北部には新線「つくばエクスプレス」が開通し、ベッドタウンとしての発展が見込めるが、その材料が我孫子市にはない。
でもよく考えれば、バブル崩壊前の右肩上がりの時代までは、程度の差こそあれ柏市も我孫子市も発展軌道に乗れていたのです。でも今は低成長と都心回帰の時代、都心距離30㎞も離れた世界では「商業機能や通勤新線の有無」によって、残酷にまでに明暗が分かれてしまうのです。
ですが、もっと詳しくみれば、柏市内でも我孫子市と同様、高齢化と若年層流出に悩む地域がたくさんあります。というか、市域の大部分が、すでにそうなっています。
柏市内には、10の駅があります。都心直結している「JR常磐線」上のターミナル駅が「柏」、その両隣が「南柏」と「北柏」。市域北部にも都心直結の「つくばエクスプレス」が通り、「柏の葉キャンパス」、「柏たなか」の2駅あります。これらの駅から、東京駅・大手町まで、乗車時間30~45分で到達できるので、都内通勤圏として十分成立します。
あと、柏駅と交差する「東武野田線」上には、「豊四季」「新柏」「増尾」「逆井」「高柳」の5駅があります。都心直結ではないため多少アクセスは劣りますが、その分地価も安いので、広めの土地付き住宅を求める層に支持され、東京通勤可能圏として成立しています。
上記の駅周辺を歩くと、「柏駅の徒歩15~20分圏内」と、「その他の駅徒歩10~12分圏内」には、新築・築浅住宅が多数建っています。つまり、都心通勤が可能なので、この地に育った子供たちも住むし、適度な流入人口もある…住宅地として世代交代ができているわけです。
ですが、駅徒歩圏を離れてバス便エリアになると、途端に「モロ高齢化」した住宅地になってしまうのが柏市の特徴。高度成長期に建ったと思われる築40年超の戸建住宅が建て替えられず、かといって新築戸建もあまり建たず、相続税対策の変な木造賃貸アパートばかりが増える、平日の日中に行くと高齢者ばかり、子供いない…という世界。地域社会として、すでに「サバイバルモード」に突入している感があります。
駅徒歩圏の「世代交代可能な住宅地」と、それ以遠の「過疎・高齢化危惧サバイバル住宅地」を、面積、人口密度を入れてざっと推計してみると、こんな結果になりました。
柏市の人口 42.0万人
うち世代交代可能住宅地 15.4万人(36.7%)
それ以外 26.6万人(63.3%)
つまり、柏市民のうち、世代交代可能な住宅地に住んでいるのはわずか37%。それ以外はバス便地域の旧い住宅地か、工場、農地、森林が延々と広がる世界であり、都心回帰の圧力にシビアにさらされて過疎化・高齢化が危惧されるという意味では、我孫子市や取手市と基本的に同じ状況と思われます。
柏市内に、東京に通える駅が「10」あるというのは、千葉県北西部の都市としては平均的で、「37の駅がある船橋市」や「20の駅がある松戸市」に比べると明らかに不利といえます。今は通勤新線がつくれる時代でもないので、既存の路線を上手に利用して「駅を増やす」、というチャレンジはやる価値があると思います。
幸い、柏市内の東武野田線にはポテンシャルがあります。
・柏―新柏間が3.1km離れているので、中間点に「常盤台」新駅をつくる。
・柏―豊四季間が3.0㎞離れているので、中間点に「旭町」新駅をつくる
現在、「柏市常盤台」地区は、最寄りの柏駅から徒歩20分以上離れているので通勤利便性が劣り、旧い住宅地が世代交代していきません。高齢化も市内トップクラスに進んでいます。でも、東武野田線上に新駅をつくれば、話が全く違ってきます。「柏駅から1駅2分」で結ばれ、都内へラクラク通勤できますので、市内でもかなり好条件の新興住宅地に生まれ変わるはず。宅地がどんどん取引され、若い世代が戸建住宅やマンションに住むようになるでしょう。同じことが「旭町」新駅についてもいえます。
しかも、「常盤台」、「旭町」新駅は、駅勢圏が既存のどの駅とも重ならないため、この2駅の徒歩圏が、まるまる「東京通勤可能な住宅地」として新たな人口を呼び込みます。計算すると、世代交代可能住宅地の人口が2万1千人増えることになります。そこから得られる長期的な住民税や固定資産税、商業発展による地方事業税を考えると、ある程度の市費を投じても実現すべきプロジェクトのような気がします。柏市の人口をさらに持続可能にするためにも大いに意味がある。
よく考えると、首都圏の各地で、新駅つくればいいのに…と思う場所はたくさんありますね。例えば、東海道線の「大船~藤沢」間は5㎞近く離れているので、中間地点の「村岡」あたりに新駅をつくればいいのに。数万の人口が張り付き、東戸塚みたいな街に成長できる可能性も見えるので、現状が実にもったいないと感じます。
次に、「我孫子市」の将来をどうするか?…柏市とはまた違ったアプローチがありうると思います。
・郊外都市として他市との人口争奪戦に勝ちにいくか?
・あるいは、都市の縮小を前向きに受け入れた上で、次世代型の価値を追求していくか?
私は、我孫子には後者の目が十分残っていると思います。風光明媚な手賀沼を擁し、大正時代、白樺派の文人墨客が集まって数々の名作を生みだし、「北の鎌倉」とまで称された地なのですから…それにここは、「東京メトロ一本で行ける、心癒される緑の田園地帯」でもあるのですから。
我孫子市内、JR天王台駅から、利根川に向かって歩いていくと、「青山」や「南青山」といった、東京港区のおしゃれな地名になります。でも「我孫子市の青山」には、ブランドショップやエステサロンはなく、その代わり緑豊かな田園地帯が果てしなく広がります。西は柏市、野田市まで、東は印西市を経て成田近くまで続く、地平線さえ見える広い田園です。
この癒されるロケーション・眺望そのものが、21世紀型のブランド価値を持つと思います。欧米には、都市近郊の田舎が注目されて、観光地やブランド住宅地として賑わう場所がたくさんあります。
この広い場所で、バリのエステとかタイの王室マッサージとか、おしゃれな喫茶店とかエスニック雑貨屋とか、ワイナリーみたいなものがあれば楽しいし、これがインバウンド観光と結びつくとさらに大きな可能性を感じます。もし私が我孫子プロモーションの責任者だったなら、ハコモノなんて一切つくらない。その代わり、我孫子の良さを新鮮な視点で紹介できる、ユーチューバーを世界中から集めますね。
福岡市で活躍しているミカエラさんみたいな、影響力あるユーチューバーに声かけて、我孫子に来てもらって、縁があれば住んでもらって、世界のいろんな言葉で我孫子を、それぞれの切り口でプロモーションする。「我孫子って何だか面白そうだぞ」と思う人間が世界中から集まり、彼らが我孫子でいろんな商売を始めるのをサポートする、長い時間をかけて、コミュニティをつくっていく…高度成長期から続く都市間競争には負けても、その代わり、21世紀的価値観のなかで、新たな勝ち組を目指す。
我孫子って、地元の小学生が様々な種類の稲を使って「田んぼアート」をつくってしまう…そんなセンスの良さを持っている街。しかも東京から至近距離にあるので、今後、意外なかたちで注目されるかもしれません。
子供の頃から、柏・我孫子の各地を、自転車で走り回った私が思うこと…
・柏は、首都圏内のメジャーリーグ都市として生き残る競争に乗り出すだろう。
・我孫子は、柏とは全く違ったかたちでの将来像を模索するだろう。
東京都心が栄える一方、30km以上離れた郊外では、高齢化・過疎化リスクに直面しています。今後、自分の地域をどうしていきたいのか、各市の模索は続きます。