インドネシア、巨大ガラパゴス不動産市場の魅力-2)バリ編

前編の続きです。

インドネシアの二枚看板といえば、東南アジア最大のメガロポリス「ジャカルタ都市圏」と、東南アジアを代表するリゾート地「バリ島」になるかと思います。

バリ島の状況は、ジャカルタ圏を含むジャワ島とは大きく異なります。同じ国に属すとはいえ、宗教、人文、産業構造、不動産市場…どれをとっても、バリ島の独自性が際立ちます。日本における沖縄、アメリカにおけるハワイのさらに上を行くほど、インドネシアにおけるバリ島は圧倒的にキャラ立ちしています。

最も根本的な違いは「宗教と世界観」でしょう。インドネシアの圧倒的大多数はイスラム教を信仰しますが、バリ島だけは「バリ•ヒンドゥー」という、土着信仰とヒンドゥー教が融合した宗教が、島民の8割以上に信仰されています。

イスラム教が厳密な一神教であるのに対して、「バリ•ヒンドゥー」は多神教で、「やおよろず(八百万)の神」が信仰のなかに息づいています。ある意味、日本人の宗教観に似ていますね。数多くの神が信じられている分、他宗教の流入には寛容な土地柄で、同じヒンドゥー教はもちろん、イスラム教もキリスト教も仏教も神道も含め、どの宗教を信仰する者が入ってきてもバリは自然に受け入れる…その寛容さが「世界的観光ブランド=バリ島」の素地になっています。

バリ島内を回ると、日本の風景にとても似ていて、親近感が湧きます。片側一車線の狭い道の両側に商店や家並が続き、街々に小さな祠(ほこら)があって、沖縄のシーサーみたいな獅子が門を守り、ガジュマルのような木があって…一瞬、沖縄の離島にでも来たような錯覚を覚えます。そういえば、バリ島には「ナシ•チャンプルー」(Nasi Campur)という、ご飯におかず数品をお皿に盛り、混ぜて食べる郷土料理があり、沖縄との共通性が際立ちます。バリ島は昔から、海を通じて沖縄や日本本土と交流していたのかもしれません。

あとバリ島は言語も文字もジャワ島方面とは異なります。もちろん標準インドネシア語は通じますが、バリ人同士は地元のバリ語で話します。インドネシア語の表記はローマ字ですが、バリ語はインド起源と思われる独自の文字を持ちます(一見、ラオス文字に酷似)。古来、バリ人はこの文字を通じてインド伝来のヒンドゥー教や仏教を受け入れたのでしょう。

バリ島の独自性を踏まえて、そろそろ不動産の話題に移りましょう。

バリ島には、おそらくインドネシアのどの地域よりも大きい、外国人コミュニティがあり
ます。特に目立つのは、オーストラリア人やヨーロッパ人など、欧米系白人定住者のコミュニティです。彼らは戸建タイプのVillaに好んで住み、長年住んでいるのでVillaの売買も盛んに行われています。

欧米人のみならず、日本人を含む東アジア系や、インド人、アラブ人などの定住者も少なくありません。今のバリ島は東南アジアで稀にみるコスモポリタンなコミュニティになっています。

定住者に特に人気の高いのが、海側のスミニャック(Seminyak)地区と、山側のウブド(Ubud)地区で、この一帯では街中の条件の良いVillaの多くが欧米人居住または所有になっています。また、伝統的な観光中心地であるクタ(Kuta)や、より静かな海辺の街サヌール(Sanur)等にも外国人が多く暮らし、その居住地は年々、広がっています。

不動産投資の観点で、バリ島が面白いのは、

1)外国人による借地Villaの売買マーケットが確立している。

2)賃貸利回りが高い。旅行者に短期貸しするとネット8〜15%は得られる計算になる。米ドル、日本円建ての家賃収納も可能。

まず1)に関して、前編で説明したインドネシアの不動産権利関係をおさらいしてみましょう。

– 外国人の個人名では借地物件(Leasehold)しか売買できない。
– 外国人が所有権物件(Freehold)を売買するにはインドネシア法人(PMAなど)を立ち上げる必要があり、設立にはコストと時間がかかる。
– Freeholdはキャピタルゲインが期待できるが、法人設立コストを考えると最低1億円以上の投資額は欲しい。一方、Leaseholdは安く買えるが、いずれ地主に土地建物の賃借権を返す前提なのでキャピタルゲインは限られる。

参入障壁が高く、外国人投資家には頭の痛い環境ですが、バリ島に限っては「借地Villaを個人名義で買い、旅行者向け貸出で回し、借地期限をある程度残した状態で外国人に売る」モデルの投資が可能な環境だと思います。その背景にはバリ島の特殊事情がもたらす、1)外国人借地Villa売買マーケット、2)高い賃貸利回りがあります。

分かりやすく、首都ジャカルタと比較してみましょう。ジャカルタ都心部には、Kempinski やFXなど、いくつかの借地コンドミニアムが外国人同士で流通しています。一等地ゆえインドネシア人富裕層が実需で買うパターンの出口も取れるため、投資として十分アリだと私は思ってますが、その代わり賃貸利回りは6%程度。借地期限は20年程度ありますが、期限が来たら売買価格の1/4程度の借地料をオーナーに払わねばなりません。ジャカルタの場合、土地オーナーがインドネシア政府なので交渉も難しい。

一方でバリ島の借地Villaの場合、より高い賃貸利回り(8〜15%)で回す目算が立ち、10年回せば投下資本を回収できる可能性があるのと、土地所有者の多くが個人(バリ人地主)なので、彼らがお金に困ったタイミングで借地料交渉の可能性もあるため、ジャカルタに比べて借地Villa投資に向いた環境だと思います。何よりも、バリ島は素晴らしく心地よい場所ですから、別荘として自己使用する楽しみがありますよね。収益型別荘として運用するなら借地で十分かと。

もちろん、インドネシア法人を設立してFreehold(所有権)買ってキャピタルゲイン狙いもできますが、その主戦場はバリ島のような小さな場所ではなく、ジャカルタを含むジャワ本島だろうと思います。ジャワ島だけで1億3000万の大人口がいて、経済発展中の都市が数多くありますから…

そう考えると、「ジャカルタ&ジャワ島で法人立てて所有権買ってキャピタルゲイン狙い」+「バリ島の特殊事情を活かして借地の収益型別荘を運用」が、インドネシアで私が追求したいハイブリッド投資モデルです。

インドネシア不動産、実に面白いですね。この一国だけで、タイ+ベトナム+フィリピンを合わせた人口と経済規模がある超大型マーケット、かつバリ島という極上の収益別荘適地もある…参入障壁高いけど、無視するには余りに魅力的すぎる国です。

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