山で遭難した話

こんにちは、Manachanです。

北海道の駒ケ岳山中で行方不明になった7歳の男児が、6日ぶりに無事保護されたという、嬉しいニュースがありましたね。

男児失踪のニュースは日本中、そして海外でも大きく取り上げられ、大勢の視聴者が数日にわたりTV画面でハラハラドキドキしましたが、無事生還できて本当に良かった。親の「しつけ」と称する行動や、6日間にわたった捜索活動等に関して、いろんな意見がありますが、私は所詮傍観者なのでノーコメント。この親子が一日も早く静かな日常に戻れるよう、これ以上の報道は慎んで欲しいと願うばかりです。

とはいえ、「遭難」が我が身、あるいは家族の身に起こったなら、当然、傍観者ではいられませんし、一生忘れられない出来事となります。かくいう私も、1997年に山梨県の奥秩父山系で遭難し、一歩間違えたらあわや、というところまで追い込まれた経験があります。

 

忘れもしない、1997年4月下旬、ゴールデンウィーク前半の連休中。私は山歩き仲間と2名で、奥多摩・奥秩父の2泊3日山行に出かけました。登頂対象は雲取山(2017m、東京都最高峰)と、その西方にある飛竜山(2077m)。コースは次の通りでした。

1日目:三峯神社~霧藻が峰~雲取山荘(泊)

2日目:雲取山荘~雲取山~飛竜山~丹波(泊)

3日目:丹波~奥多摩~帰宅

hiryu1

 

天候に恵まれ、1日目の登山は順調でした。2日目の朝も、まず幸先よく雲取山の山頂を踏破し、その足でさらに西方、4時間ほどかかる飛竜山に向けて、稜線を歩きました。

雲取山は首都圏でも人気の山で常に登山者が多いですが、ここから飛竜山に向かう道は人影もまばらで、道中、出会った登山者は10名にも満たない数でした。

4月後半とはいえ、ここは標高2000m近い稜線、日陰には雪が残り、アイゼンつけて慎重に歩き、思ったよりずっと時間がかかりました。飛竜山(2077m)に着いたのは午後1時をゆうに回り、そこで遅い昼食を摂りました。

hiryu2

 

飛竜山からは、目的地・丹波(たば)の集落に向けて、10㎞を超える下山路があります。日没前に到着すべく、先を急ぎました。でも、その時に生じた「心の焦り」が、いま考えれば間違いのもとでした

 

hiryu3

 

長い下山路、まず最初のピーク前飛竜(1954m)を超え、次の熊倉山(1624m)に向かう途中のどこかで、本来のルートとは違う、獣道に入ってしまったようです。

獣道は、見た目は立派な道で、そこが間違いだとすぐには気が付きませんでした。急斜面をぐんぐん下ると、だんだん道が細く、悪くなる。「おかしいな~道間違えたかな?」と思ったところで、時間はもう午後4時を回っています。もし本来の下山路でないとすれば、日没前に丹波の集落に着くのは不可能です。

周囲は、見渡す限り山、山、山…この世には山しかないのかと思う位。遠く下方に沢音が聞こえますが、そこに至る道はなく、急斜面すぎて下りる術はなさそう・・・そもそも平らな場所がなく、樹林も水場もない禿山の斜面。しかも間もなく日が暮れる。今日中に何もできないと思った我々2人は、寝袋に入って斜面に身を横たえました。

幸い、水と食料は数日分ありました。おそらく標高1500m前後の高地ですが幸いその日は暖かく、生命の危険は感じませんでした。でも、「俺たち、遭難しちゃったんだなあ・・・」、「ちょっとまずいかも・・・」という事実を、徐々に実感してきました。夜も更け、気温がプラス1桁台のなか、寝袋のなかで泥のように眠りました。

 

この夜、冷たい雨が降っていたらさすがにつらかったと思いますが、幸い、天気は晴れのままで、次の朝を迎えました。天は、我々2人に生還のチャンスを与えたのです。

日が開けると、昨日下りた急斜面を、必死に、よじ登りました。とにかく、稜線に出れば何とかなるの一念で、石や草につかまりながら登る。2時間ほど奮闘したでしょうか、ついに、熊倉山近くの稜線に到着!助かった!

その日は、結構な数の登山者、下山者がいました。人と会えたことが、とにかく嬉しくて、誰彼かまわず、息せき切ったように話しかけました。

稜線を下って、サオラ峠(1420m)の道標をみると、「無事、生きて、還ってきたんだ!」という実感がわいてきました。昼前には丹波の集落に到着。川魚バーベキューをして生還を祝いました。

hiryu4

sounan2

 

最後に・・・自らが山で遭難した心細さを知っているからこそ、今回の男児保護のニュースは、本当に心から嬉しい。「無事、還れてよかったね」…それ以外の感慨はありません。

私自身、あのアクシデントで、もしかしたら生還できなかったかもしれないと思う時・・・いま生きている有難さを噛み締めます。そして一日、一日を悔いなく生きていきたいと思うのです。

Facebook にシェア

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*