日本語は特殊なのか?

こんばんは、Manachanです。今回のブログは「言語」の話題でいきますね。

Huffington Postで、最近こんな記事を読みました。「やっぱり奥が深かった。日本にしかない素敵な5つの言葉

「わびさび」、「初心」、「もったいない」等…日本語の印象深い言葉を紹介する記事です。これらの言葉を作者が「素敵」だと思うのは結構なのですが、「日本にしかない」、「世界の言葉ではいい表せない」、「海外の言葉に訳せない」と、本人が根拠なしに思い込んでいるところが気になり、「日本で数少ない、言語学習オタクの不動産投資家」として、一言、コメントしたくなりました。

日本人が書く、「日本語特殊論」、「日本文化特殊論」の類の文章は、昔も今も、よくあります。地球上のあらゆる文化や言語は「固有」で「ユニーク」な面があると同時に、他の文化・言語と共通する部分も必ずあるはずなので、「ひとり日本だけが特殊」という言説は、一般論としては無理があります。

たいていの場合、「日本と比較する対象が偏っている」(例.欧米と日本だけ比較して、東アジアと比較しない)とか、「文化・言語のごく一部の側面だけ切り取って比較する」…そんな文脈のなかで限定的に成立する「日本=特殊」論なので、学問的な正確さとは無縁。むしろ、「日本を特殊な(他に比類ない)ものだと思いたい」という作者の願望が生み出す、珍説奇説の類だと思います。

 

では、学問的な視点から、日本語が世界の言語のなかで特殊な存在かというと…データをどう分析してもそういう結論になりそうにありません。まず、日本語の構造や音素からいうと、

・基本語順が「SOV型」(主語+目的語+動詞の順)…これは、世界の言語の45%を占める、一番ありふれたタイプです。

・「膠着語」(「私、○○する」みたいに、単語に接頭辞や接尾辞を付着させることで、その文の中での文法関係を示す)…これは、ユーラシア大陸のほぼ北半分に分布する「ウラル・アルタイ語族」に共通の特徴で、エスペラントにも採用されています。珍しいとはいえません。

・「母音の数が5」…世界の言語でみると平均的な数で、出現率が最も高い。英語(母音が13ある)の方が却って珍しいです。

・「子音の数が14」…世界の言語でみると「平均よりやや少ない」。数でいえば二番目に多いグループに属します。

 

次に、文字や語彙をみてみましょう。

・「漢字を使う」…これは、東アジア特有の文字体系。いま漢字を使っている社会は中国(台湾、香港を含む)、日本、韓国だけですが、中国が含まれるので使用者数が半端なく多い。地球人類の2割強が使っている文字を特殊とはいえない。

・「借用語(漢語)が多い」…日本語の語彙の約6割が漢語起源とされますが、これに関しては韓国語とベトナム語もほぼ同じ状況。日本語は「東アジアCJKV(China, Japan, Korea, Vietnam)グループを構成する一言語」といえます。

・「カタカナ語(英語由来の外来語)が多い」…とこれは日本語だけでなく英米圏の影響を受けている世界中の言語に共通する特徴です。私が習った範囲でいうと、タイ語や韓国語も日本語に負けず劣らず英語由来の言葉が多い。

 

あえて、日本語が珍しいと思える要素を挙げると、

・「文字が漢字、ひらがな、カタカナの三種類ある」

・「日本固有の語彙を漢字で表記する”訓読み”を発明している」(韓国語、ベトナム語にはない)

・・・それ位でしょうか。ただこれだけをもって、日本語が世界的に特殊だというのは無理があるでしょう。

 

あと、前出の記事に出ていた、日本語の「わび・さび」、「もったいない」、「初心」、「切ない」、「豊富な一人称」が、本当に日本語固有の概念であり、外国語に翻訳不可能なのでしょうか?

思うに、「切ない」に似た気持ちを表す言葉は、たいていの言語にあるのではないでしょうか?また「一人称」の語彙は、敬語や家族呼称の発達したアジアの言語では大抵豊富。たとえば、中国のいろんな地方で話されている一人称の語彙を集めれば、たぶん日本語のそれを凌駕するでしょう。

「わび・さび」、「もったいない」のようなコアな語彙にせよ、日本語が世界中の多くの人に学ばれていけば、そのコンセプトがいろんな文化に移植されます。日本語は辺境の言語ではありません。非母語圏の学習者数でいえば、日本語は世界第7位、約400万人に学ばれている言語です。「わび・さび」、「もったいない」なんて、日本語を学んだ世界中の外国人がすでに使ってますよ。

 

そろそろ、まとめます・・・日本語は特殊な言語なのでしょうか?

・日本語と他の言語を、同じ土俵でフラットに比較する限り、特殊な言語とはいえない。他の多くの言語と共通点を持つ「人類の言葉の一種」であり、より正確にいえば「東アジアCJKVグループを構成する一言語」である。

 

最後に、言語に限らず、日本と外国とを同じ尺度で比較する視座って、海外でビジネス・投資する上でとても大事、というか不可欠だと思います。

たとえばの話、そういう視点がないと、前出「日本語特殊論」と同じになっちゃう。つまり、「日本とそれ以外」という区別しかできず、たとえば「日本に地震放射能の問題があるから、とっとと海外に出る」みたいな結論に飛びついちゃう・・・

日本と同じ尺度で比べた時、海外にはどんなリスクがあって、日本と比べてどうなのか…データに基づく冷静な判断を、常にできるようになりたいものです。

 

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