おはようございます。Manachanです。今日は朝6時過ぎに家を出て、東京駅から新幹線で名古屋へ移動中。いま神奈川県内を走行してます。相模川を超えると急に田舎な風景になるのね…今日のテーマは、日本の不動産における「路線価」と「実勢価格」について書きます。
私、不動産の仕事をはじめてから、これまでの人生では考えられない位、日本国内のいろんな地方に出張で行く機会が増えました。ここ1か月の間に行った先は、愛知県一宮市、静岡県浜松市、福島県郡山市、千葉県君津市、栃木県小山市…東京から1000㎞離れた九州や北海道の仕事もあります。
いろんな地方に行くと、東京にいては分からない、それぞれの事情があることが分かります。言葉も食べ物もライフスタイルも、それぞれの地域で違う。日本は広いですね。
地方出張が続くと、「東京の常識」が通用しないことがよくあります。「土地の価格」は、その最たるものでしょう。役所が決めた「路線価」や「固定資産税評価額」と、売主・買主が決める「実勢価格」のバランスが、大都市圏とそれ以外の地域で、全く違うのです。
首都圏の住宅地では、「路線価は実勢価格の7掛け(70%)」と言われます。東京郊外のベッドタウン、たとえば八王子とかさいたま市あたりで、実勢価格で「坪50万」する宅地の路線価は、その7掛けの「坪35万」くらいになることが多い。
東京を代表する、銀座や渋谷などの商業地では、いま世界中の投資マネーが入って実勢価格がむちゃくちゃ高いので、「路線価は実勢の3掛け?」あるいは「そもそも路線価の意味がない」世界になっています。「路線価<実勢価格」の差を利用した、「タワーマンション減税」テクニックも、東京では流行っています。
<都内タワーマンション、実勢価格は評価額を大きく上回る>
ところが、地方へ行くと、状況は一変します。
私、この記事読んでた時、小学4年の娘ソフィアと一緒にいました。ソフィアが、「本当に980円で土地買えるの?私のおこづかいで買えるね」と言ってました。
980円で分譲されるこの土地、1区画あたりの固定資産税評価額は「82~124万円」だそうです。20年以上買い手がつかなかったこの土地が980円で流通した場合、「評価額は実勢の820~1240倍」ということになります。
閉店から10年、今も固定資産税 減額求める訴訟も(北海道芦別市)
先ほどの「深川市」から遠くない「芦別市」で起こったケース。閉店から10年経ったパチンコ屋の買い手が未だにつかないという。約500平方メートルの土地を100万円で買う、という人はいたが、解体には1千万円かかるため、あきらめたよう。
市場価値がゼロに近い不動産物件だが、芦別市はこの土地に約150万円、建物に約4200万円の評価額をつけている…もし、実勢価格が100万円とすれば、「土地建物の評価額は実勢価格の43.5倍」ということになります。
<芦別市のパチンコ店。値段はつかないのに固定資産税は毎年かかる>
上記2件は極端な例に聞こえるかもしれませんが、札幌以外の北海道の地方都市なんて、大抵どこもそんなもん。軒並み「路線価・評価額」>「実勢価格」の世界です。首都圏と真逆ですね。
最近は、東海地方の土地を査定する仕事が増えていますが、
・名古屋圏では東京と同じく、「実勢価格」>「路線価・評価額」
・岐阜市の郊外住宅地あたりでは、「実勢価格=路線価・評価額」
・岐阜県の郡部や小都市になると、「実勢価格<路線価・評価額」
私は、「岐阜市の住宅地で路線価が実勢とバランスする」という事実は、注目に値すると思っています。岐阜市は、日本の真ん中にある、人口40万人の中堅都市。都市規模も、大きくもなく小さくもない、日本の平均的なサイズ。
・岐阜市と比べて都会なら、路線価は実勢より安く抑えられている。
・岐阜市と比べて田舎では、路線価は実勢より高くなっている。
もう少し、掘り下げて考えると…
・日本の役所は、全国平均値に近い岐阜市あたりをベンチマークにして、ここの実勢価格が公定価格とバランスするように、路線価や評価額を設定しているのではないか?
・岐阜市より都会な、名古屋や東京みたいな土地で、実勢価格に対して課税してしまうとオーナーの負担が大きくなるから、評価額を控え目に設定している。
・岐阜市より田舎な地域で、実勢価格に対して課税してしまうと、全然、税金とれなくなって、地方自治体の財政が行き詰ってしまうから、評価額は高めに設定している。
あくまで仮説の域を出ませんが…このように考えると、日本の地価に関するいろんなことがロジカルに説明できてしまう。面白いですね。
最後に一言…最近、土地建物の査定依頼が増えていますが、岐阜市より田舎と思われる地域で、「路線価や評価額がこれくらいだから、俺の土地もこれくらいで売れるはず」なんて考えないでね。そもそも無理なんですから。
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