アスペくんの生きる道ー2)社会人マナブ編

前回の続きです。

アスペルガー(高機能自閉症)特性ゆえ、子供時代、「この子に会社勤めは無理だろう」と言われていた私・・・しかし、蓋を開けてみれば、大学卒業後、19年間もサラリーマン稼業を続けることができました。

特に大きかったのが、サラリーマン暮らし19年間のうち16年間を占める、「ITエンジニア」という仕事でした。

「ITエンジニア」(特にプログラマー)は、アスペルガー特性の人間(以下「アスぺくん」と略)には、極めて親和性の高い職業として知られています。人間関係のファジーさは苦手だけど、コンピューターなら「0」か「1」で決着がつく世界なので、強い論理数学能力を持つアスペくんの得意分野が生きる職業の一つです。他に、アスペルガー向きとされるのが、建築士、学者、デザイナー、会計士など、いわゆる「職人系」の仕事。

逆にアスぺくんに不向きの職業とされるのは、接客業、教師、レストラン、電話オペレーター、事務、営業など…柔軟なコミュニケーション能力や協調性が求められる仕事はきつい。特に他人(特に顧客)のペースで動かされたり、臨機応変な対応を求められる職業は極めて不向きとされます。

私が幸運だったのは、自分が社会に出た頃、ちょうどインターネット革命が起こり、eメールという通信手段が開発され、普及したこと。

アスぺくんにとって、eメールは画期的な発明でした。電話や対面コミュニケーションにストレスを感じていた者にとっては、まさに福音。eメールがあれば、自分の声や表情を相手に知られずに、ストレスフリーで意志疎通できるのです。

特に私は長年グローバル企業に勤め、用事はほとんどeメールで済ます、相手はたいてい外国人で私の名前「マナブ」の性別さえ分からず、時には「女性」だと思われる…そんな職場環境は、極めてアスペルガー向きで、私が長年サラリーマンを続けられたのも、eメールに助けられた面が大きい。

最近は、アスペ脳を積極的に活用しようという企業の取り組みも広がっています。

しかし、いくらITエンジニアとはいえ、実際の仕事の現場では、私の得意分野ばかりが生かせる環境とは限りません。時には、極めて不得意な業務の現場に放り出されたこともあります。その時の業務評価は恐ろしく悪く、「解雇」の二文字がちらつくほどの状態でした。

どんな仕事が苦手だったかというと、

1)要件定義 (顧客の業務を理解し、業務フローに落とし込む仕事)
2)プレイングマネジャー(上司として部下を管理しながら、部下がやるような実作業もやる仕事)

特に、「要件定義」は絶望的に不得手でした。なぜかというと、顧客のペースや脳味噌の構造に合わせて仕事しなければならないから…アスぺくんは、自分のペースで働くのは極めて得意だけれど、その逆はからきしダメなのです。

要件定義の現場にいた頃、私が脳味噌をフル稼働させて、自分ベストの業務フローを出しても、顧客に「全然違う!」と言われる。上司には「なんで、こいつはいつまでも理解できないんだろう」と言われる。死ぬほど頑張っても、結果は変わりませんでした。

そんな仕事に配属された時の成績は、惨憺たるものでした。たとえば、

1998年(29歳):都内の役所に配属され、客先に常駐して道路管理の業務フロー整理の仕事を命じられるが、全然、使い物にならず、結局、年下の上司が私の仕事を全て引継ぎ、間もなくお役御免に。その年、私の業務評定は、最低ランクの「C」(下から7%)で昇給ゼロ。メンターから、「この仕事、向いてないかもしれないね」と言われたほど。

その頃、私はアスペルガーという言葉さえ知りませんでしたが、自分の個性として、「普通の人にはできない特殊能力がある」反面、「普通の人が当たり前にできることが、どうしてもできない」。特に不得手なことは、自分の努力ではどうにもならないことを学び、「自分の得意分野が生きる職場だけを、注意深く選んでいく」ことに決めました。

結果的には、それが自分のサラリーマン人生を延ばすことにつながりました。特に、誰の追随も許さなかったのが、語学能力。「ITエンジニアで、日本語と英語と中国語、全部ビジネスレベルでできる人材」というのが、日本のみならず、世界中どこに行っても稀少価値なので、重宝されました。

この特殊能力のおかげで、他社により高い年俸で転職したり、海の向こうの職場に転職することは、私にとっては簡単なことでした。

2000年 日本→オーストラリアに国際転職
2005年 オーストラリア→中国に国際転職
2007年 中国→日本に国際転職 

2009年 日本で転職、年俸6.4%アップ
2012年 日本で転職、年俸14.5%アップ

しかし、雲行きが怪しくなったのが、リーマンショック(2008年)以降。全世界的に、金回りが悪くなり、ITエンジニアの職場環境が”Lean and Mean”(ケチでスリム)になり、経営者は、中間管理職を減らし、マネジャーにもプレイヤーを兼務させるようになりました。

これまでと違って、「自分の得意分野だけで勝負する」ことができにくい職場環境になったのです。プレイングマネジャーを長年やらされれば、アスぺくんじゃなくたって、誰だって消耗します。

そして、私の16年にわたるITエンジニア渡世に終止符を打ったのは…自らのアスぺ特性と、極めて不得手な「要件定義」でした。

2012年(43歳):勤め先の会社が極めて人手不足ゆえ、私は都内のアパレル販売会社に常駐し、プロジェクトマネジャーと兼務で要件定義も任せられました。この仕事が絶望的にできず、連日の終電&徹夜が続く奮闘努力にもかかわらず、顧客クレームでプロジェクト途中で現場を外され、数週間後に解雇された。

あのプロジェクトが佳境を迎えていた時、顧客担当者と業務手順を確認した時、「未だに、こんなこと質問するのかよ?」と、ものすごく怖い顔で睨まれたことを、今でも覚えています。

自分としては不本意だけど、顧客がキレる位、相当、的の外れたことを質問してたんだろうな。それに、年俸1300万円で採用した人間を、わずか5か月
目で解雇するのは、相当、出来が悪かったんだろうな。しかし、何が的外れだったのか、未だに気付いていないのも、アスぺくんならではのこと。

あの時の、客の怖い表情を思い出すたびに…心の声が聞こえてきました。

「もう、これ以上サラリーマンは無理だよ。潮時だよ」
「いろんなことあったけど、19年も、頑張ったんだから、上出来じゃないの?」

解雇され、2月の寒風に放り出された日から、1年半。今の私は、都内五反田に事務所を構え、宅建業免許を取り、「気楽な一人会社の社長」として、働いています。

40代半ばにして、初めて手にした、「真に、自分らしい働き方」。上司も部下もおらず、事業に大成功するチャンスと、失敗して野垂れ死ぬ自由と、いずれも満喫しています。

正直言って、野垂れ死ぬリスクは、そんなに高くないと思ってます。今の私の働き方って、得意分野でしか勝負してないからね…アスぺくんが得意分野だけで働けるならば、たいていの人には負けないはずと思ってるから。

最後に、アスぺくんに贈る言葉を、いくつか。

1)人生は、適度に生きにくい位が、ちょうどいい。

2)めくら千人、目明き千人…世の中、常識のないキミを毛嫌いする人もいるだろう。でも、それと同じ位、真っ直ぐでひたむきなキミを好きな人もいるんだ。

3)皆と同じことをさせようとか、周囲に合わせるべきとか、そんなスタイルの上司のいる職場にいても、芽は出ないので、配置換えか転職を考えよう。

4)自分の良き理解者は、一生、大事にしよう。

5)苦手なことを改善しようとしても無理、とにかく長所を伸ばし、自分の得意分野が生きる働き方や活動の場を見つけよう。

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コメント

  1. 金谷隆儀 より:

    1. 自分の周りにも
    こんにちわ、ブログ拝見しました。

    鈴木さんの解説は私にもあてはまると思います。

    もっとも、自分の得意なことを伸ばせばよいとおもいます。

    日本の学校教育は、明治時代から戦後の高度成長期にかけての製造業(低コスト大量生産)に最適化したのでしょうが、現在では効き目が弱まっていると思います。

    http://ameblo.jp/dainantoshi/

  2. emiko777 より:

    2. そうだったのですね
    10年近く前、私のフランス人の知り合いの息子さん(その当時20位)もアスペといわれましたが、その当時はあまり意味が分かりませんでした。
    フランス郊外の立派なお宅を訪問しましたが、かなり重症のアスペだったようです。
    ピアノが天才的に上手なのにびっくりしました。
    まったく私たちとコミュニケーションがうまくできなかったのを思い出しました。
    今この文章を読んで、得意分野のみを追及して、あと周りにサポーターがいれば普通に生きていけるのだと思いました。
    今どうしているのかが気になりました。
    有難う御座いました。
    http://ameblo.jp/yuri-no-hana-777/

  3. manachan より:

    3. Re:自分の周りにも
    金谷隆儀さん

    >もっとも、自分の得意なことを伸ばせばよいとおもいます。

    はい、それがアスぺの処世術ですね。常識ない、苦手なことは治らない、だから、得意分野で攻めまくるしかない。
    http://ameblo.jp/manachan2150/

  4. manachan より:

    4. Re:そうだったのですね
    emiko777さん

    >得意分野のみを追及して、あと周りにサポーターがいれば普通に生きていけるのだと思いました。

    はい、アスぺ渡世には、「得意分野」=「太陽」、「サポーター」=「水」のようなもので、どちらが欠けても生きていけません。

    その二つが揃えば、まあ大丈夫。社会や職場に適応しているアスぺもたくさんいますよね。

    http://ameblo.jp/manachan2150/

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