日本ではかなり前から、人間の少子化が社会問題になっていますが、「会社の少子化」にも、本腰を入れて取り組まなくてはなりません。
総務省が発表した「商業登記情報(2009年・年次表)」によると、法人(個人事業含まない)の設立登記件数は、2006年をピークに、かなりの落ち込みを示しており、2009年には86016件と、ここ10年で最低を記録しました。
2006年 115,178社
2007年 101,981社
2008年 92,097社
2009年 86,016社
途中でリーマンショックがあったとはいえ、この落ち込み方、まじで何とかしなくてはなりません。経済規模に比べて、起業の件数、伸び率とも、諸外国に比べて振るわないのが、今の日本の姿です。
起業は、活力ある明日の日本をつくるのに、欠かせません。行政サイドでは、起業を促進すべく、それなりに努力してきています。たとえば「資本金1円で起業」できるようにしたり、合同会社という、比較的簡単に会社を設立できる制度も整備しました。私も昨年、合同会社を設立しましたが、余りに簡単かつ安価に設立できたので、驚いたものです。
そこまで支援しても、一向に燃え上がらない日本の起業熱、一体どうすれば良いのでしょう。問題の根本は、起業をめぐる社会環境にあると考えます。
よく言われることは、「日本の社会では敗者復活が難しい」、「起業に一度失敗したら、取り返しがつかない」等々ですが、なぜそうなるのでしょう?私思うに、
・起業するからには、サラリーマンを辞めて、専業でやるのが当たり前
・事業資金は、自分の家屋敷を担保にして、借金して調達するのが当たり前
・会社がコケたら、家屋敷とられて、まともな再就職もできず、結局何も残らない
・その頃には、取引先も友達も逃げて、世間から冷たい目でみられる
みたいな、「失敗したら悲惨」という「古くさい事業のイメージ」を、日本人が未だに引きずっているからではないでしょうか?
私自身、最近は東京都の制度を利用して、事業資金の調達を進めているのですが、役所や金融機関の担当者からよく言われるのは、
「鈴木さんは、いま勤めている会社を辞めて、事業に専念するんですよね?」
私自身、「ええ、まあ、そのうち・・・」みたいに、お茶を濁して答えますが、内心は、今の勤め先を辞めるつもりなど、毛頭ありません。だって、ITの仕事好きだし、これまで十数年もかけて、築き上げてきたITのキャリアを手放したくありません。
心の底では、「起業するのに、なぜ会社を辞めなきゃならんの?」、「サラリーマンと事業主、二足のわらじ履いて、どこがいけないの?」と思っています。
だって、大人は誰でも、二足、三足のわらじ履いてるじゃないですか?この世の中で、いろんな顔を持っているじゃあないですか?たとえば私は、父親でもあり、夫でもあり、サラリーマンでもあり、不動産投資家でもあり、それを発展させた法人事業主でもあり、セミナー講師でもあり・・・名刺だって4種類持ってますよ。
だからこそ、「起業するからには、専業でやらなきゃならない」みたいな考え方が、物凄く古臭く感じるのです。少なくとも、ネット時代にそぐわない。今の時代、サラリーマンが仕事ひけた後、ネット使って、アフィリエイト、デイトレ、ヤフオクなどで、巨万の富を築くのも珍しくないわけで、今どき、サラリーマンやりながら起業するのは、全然おかしい話じゃないよね?
それに、事業資金の受付窓口が、役所も金融機関も、たいてい午後5時とか6時に閉まってしまうのも、現役サラリーマンにとっては極めて使いにくい。これも「専業」「脱サラ」を前提とした仕組みだからと思う。
40代の、スキルと経験を積んだサラリーマンが、脱サラするのは、すごくリスキーな選択だということを、お役所や金融機関は、ちゃんと分かっているんでしょうか?脱サラして、事業うまく行けば良いけど、確率的には、失敗する方が多い。でもって、失敗した後、元の給料でちゃんと再就職できますか?キャリアに数年間のブランクができてしまったら、特に40代、50代だと、非常に不利な条件で、不本意な就労を強いられるのが関の山。少なくとも私は、そんな選択はしたくない。
この国は果たして、本気で起業を促進したいのだろうか?それとも、起業して欲しくないのだろうか?・・・そんな疑問が頭を駆けめぐるほど、お寒い現実がある。
夢を追いかけるため、リスクをとって、起業する、その入り口は、気軽であるべきだと思う。誰でも、いつでも、どこでも、思い立った時に、あたかも炊飯器のボタンを押すような気軽さで起業できるようになれば・・・そして、誰でも、いつでも、どこでも、低コストで気軽に事業資金を調達できる仕組みが整えば、起業なんて、爆発的に増えるでしょうし、「会社の少子化」なんて、すぐ解決できると思うのに。
真面目な話、日本がここまで事業興しにくい国であるなら、私は香港とかマカオとか、シンガポールとか、もっと簡単に会社やれる国に逃げちゃうかもしれませんよ。
せっかく、日本で起業する気になった者を、みすみす海外に逃がしたくないでしょ?だったら、一緒に考えましょうよ。どうしたら、人々が会社興したくなる国にできるのかを・・・。