今日、マニラは朝からずっと雨・・・
散歩する気にならないし、時間も余ってるので、エッセイひとつ書きます。
昨晩、勤め先のフィリピン事業部の同僚、そしてオーストラリアから出張で来ているマネジャーと、
総勢3名で連れだって、レストランで食事しました。
彼らと楽しいひとときを過ごしながら、私が思ったこと・・・
ここフィリピンでは、日本から来た人間と、オーストラリアから来た人間とは、立場がそんなに変わらないんだな。
日本とオーストラリア、いずれも、世界的には高所得の先進国で、
フィリピンに来たら、貨幣価値・物価の違いから、「おいしい」思いをします。
日本の物価、あるいはオーストラリアの物価と比べると、
ここフィリピンの飲食費、宿泊費、日曜雑貨、土産物の値段・・・
贅沢しなければ、ほぼ3倍から5倍の「使いで」があると感じるでしょう。
また、日本人やオーストラリア人が、ここフィリピンで驚くのは、「安い労働力を贅沢に使っている」こと・・・
ホテルやショッピングセンターでは、守衛が数名、必ず立っている。
空港にあるような、荷物検査システムとかもあって、女性含めて、4~5名がいて、いつも暇そうにしている。
レストランでは、「無駄」かと思うほど、若い従業員がたくさん働いていて、客の数より多かったりする。
日本やオーストラリアでは、人件費を考えると割に合わないので、こんな光景は、とうの昔に消えてしまいましたね。
私の勤め先は、グローバルな組織なので、各国のITスタッフやマネジャーが、それぞれの持ち場で、同じような仕事をして、チームを回しています。
しかし、仕事内容や職位が同じでも、その給与水準は、国によって大きな違いがあります。
日本とオーストラリアは、アジア太平洋のなかで、最も給与が高いグループになります。
次いでシンガポール、そして香港、韓国、台湾あたりが続き、次に中国大陸、マレーシア、タイ・・・
ここフィリピンは、インドネシアの次くらいに、給与水準が低い国になります。
各国の物価水準が違うので、スタッフの給与も、それに見合ったものになるわけですね。
私やオーストラリアのマネジャーは、フィリピンのスタッフからみると、高給取りになります。
しかし、現地のライフスタイル、物価水準で暮らす前提でいえば、
日本・オーストラリアよりも、フィリピンのスタッフの方が、暮らし向きは豊かかもしれません。
たとえばの話、フィリピンのITスタッフは、自分の給料でメイドとか、運転手とか、雇うことは可能ですが、
日本やオーストラリアのスタッフで、本国で同じことをするのは、ほぼ無理です。
いずれも、「お手伝いさん」を雇ったら、月20~30万はかかってしまいますから・・・
もちろん、整備された環境、空気や飲料水の質、教育水準などの「生活の質」は、もちろん先進国の方が上ですけど、
フィリピン現地のレベルで良いと割り切れるなら、
はっきり言って、先進国で普通にサラリーマンやるよりは、気分的にはリッチに暮らせると思います。
うちの勤め先みたいなグローバル組織において、
フィリピンなど新興国のITスタッフは、先進国に比べて、安い給料で雇える。
それでいて、現地物価水準に対して、十分な給料になるから、結果として、良い人材が採れる可能性が大きい。
それを可能にするのは、新興国における、安い労働力の豊富な存在・・・
私が思ったこと・・・
「労働」の面で、同じ土俵に立ってしまったら、我々先進国の勤労者が、新興国に勝てるわけがない!!
だって、日本やオーストラリアで暮らせば、国際的にみて、物価は高い、その分、給料も高くなる。
グローバル企業からみれば、我々は、高コスト労働力に見える。
業務の標準化が進んで、世界中どこでも、シームレスに同じ仕事ができるような状況になったら、
先進国勤労者は、どんどん、新興国勤労者に取って代わられるしかない。
だって、同じ「労働」ができて、より安いコストで雇えるのなら、雇用主は誰だって、新興国で雇いたがる。
結局のところ、日本など先進国で、今後もずっと暮らしたいのなら、
そして、それなりに経済的な豊かさを求めるのであれば、
「労働者」になってはいけない。
「標準化できる労働」以外の部分にフォーカスして、
自分を戦略的にポジショニングしていく以外に、活路は見出せないと思います。たとえば、
・「労働」を定義、デザインする側に回る (例.業務プロセスの専門家)
・他人が簡単に追い付けないような、専門知識、特殊知識を活用する職につく(例.法律・行政専門職)
・他人の「労働」を、自分の収入にする仕組みをつくる (例.ビジネスや不動産事業)
また、先進国ではどこも、新たな働き口が少なくなり、労働力の「供給>需要」になるはずなので
自分が、労働を供給する側に回ると、レッドオーシャン(血の海)での戦いを強いられる可能性が大きい、
また、モノ・サービスも余り、供給過剰、需要不足になるはずなので、
自分が財・サービスの供給側に回っても、同様に、レッドオーシャンになりがち。
ですので、供給側の業者に対して、売れる戦略、売れる方法など、付加価値サービスを提供するサービスの方が、
今の時代、先進国経済に適合した、ビジネスモデルだと思います。
先進国ではすでに、
工業の時代は終わり、サービス主導の経済に、
労働者の時代は終わり、専門家・コンサルタントの時代に、
なってきています。工業や労働が、新興国・途上国に行ってしまうのは、止められないから・・・
彼らがすぐには追い付けない部分に、自分自身を持っていくしか、活路はないのです。
TPPの論議も、未だに、時代遅れ、工業化時代の頭を引きずるのではなく、
グローバルな視野に立ちつつ、サービス化・専門化といった、
先進国経済のパラダイムシフトを意識して、交渉に臨んでほしいものです。