「外貨収入&日本でリタイア」という選択肢-後編

前編の続きです。

後編のキーワードは、「プロフィットセンター」(Profit Center=お金を稼ぐ場所、以下PCと略)と「コストセンター」(Cost Center=お金を使う場所、以下CCと略)。

多くの人にとって、お金を稼ぐ場所と使う場所は一致します。例えば東京在住のサラリーマンにとっては「PC=東京、CC=東京」。彼らは東京の給料を稼いで、東京の物価で暮らしています。

不動産投資は、生活する場所の制約を超えて、別の場所で収入を得る手段の一つです。例えば、東京在住の現役サラリーマンが札幌の不動産を買って家賃を得る場合、「PC=東京と札幌、CC=東京」になります。

海外不動産投資は、自分が暮らす通貨圏以外で収入を得る手段になりえます。最近は日本在住のサラリーマンや事業主がアメリカの不動産から賃料収入を得るケースが増えていますが、その場合は「PC=日本と米国、 CC=日本」になります。収入通貨は日本円と米ドル、支出通貨は日本円になります。円生活者が海外不動産投資をすれば、資産や収入源を複数通貨に分散できるうえ、今後、仮に米ドルの為替レートが日本円に対して上がった場合、それを日本円に換金すれば為替利得も得られるので人気が高まっています。

さらに、不動産の賃料収入は、賃貸管理をアウトソースすることで、自分の時間をほぼ使わずに収入(不労所得)を得ることができます。それで十分な収入を得られればサラリーマンを辞めてリタイアできたり、お金を稼ぐ場所と使う場所を完全に分離することもできます。

物価の高い場所で賃料収入を得て、物価の安い場所で暮らせば資金効率が良いといえます。例えば東京都内で賃料収入を得て、地方都市の安い物価で暮らす人もいますし、海外志向派であれば日本の不動産から得られる賃料収入で、生活物価の安いマレーシアやタイで暮らす人もいます。その場合、「PC=日本、CC=東南アジア」になり、ようやく、前編でお話しした内容と結びつきます。少しおさらいしてみましょう。

1)CC=東南アジアと一言でいっても、実際にかかる生活費は人によって様々。衛生、安全、文化面の要求水準が高い人の場合、日本国内と大差ない生活費がかかるケースもある。

2)日本並みの生活費がかかる人ほど、日本経済のデフレや円安、現地物価インフレのダブルパンチで生活水準が下がるリスクに晒される。生活水準を落とさないためには、資産運用の効率を高めたり、収入通貨を多様化するなど、資本主義リテラシーが求められる。

その問題意識を踏まえた上で、私がどうしているかというと、現時点では、

PC=日本、豪州、米国、ドイツなど
CC=日本(東京)

という選択をしており、このライフスタイルはコスパ良いと感じています。なぜなら、

1)日本より所得物価水準が高くてインフレのある国をPCに組み込んでいる。

豪州、米国、ドイツは、現時点では日本より所得水準が高く、家賃収入も日本と比べれば高いケースが多いうえ、マイルドにインフレしており家賃も徐々に上昇中。

2)物価が上がりにくく、生活環境の良い日本をCCとして選んでいる。

日本はここ20年以上、物価水準が上がっていないし、今後当面も上がる可能性が少ない。分かりやすくいうと、今の3万円は5年前の3万円と同程度の価値があり、5年後の3万円もおそらく同じくらいの価値がありそう。これは、「CCとして考えれば他の国で得がたい高パフォーマンス」といえます。

世界中を見渡すと、生活物価は普通、年に数%は上がるものです。現状で生活費が安いといわれるタイやマレーシアだって普通にインフレしてます。5年前、40バーツで食えたメシが、今だと50〜60バーツするはずです。現地物価があがれば現金の使いでは年々下がります。先進国のアメリカやオーストラリアだって、同じメシが5年前と同じ値段ということはまずありません。久々に行くと「たけー!」と驚くこともしばしば。

しかし、日本にはその現象がありません。東陽町駅前「魚家」の海鮮丼ランチは799円で超うまいですが、値段は5年前から変わっていません。木場駅に向かってしばらく歩くと「やまや」の明太子食い放題日替わりランチがありますが、ここもすげー旨い評判店なのに5年前から900円で値段変わりません。

物価の上がらない日本を、CCとして選ぶことは、経済合理に叶っています。PCとして選ぶと割に合いませんが、CCとしては素晴らしい。物価が20年も上がらず、20年前と同じ値段で同じように旨くてクオリティの高いメシが食えて、20年前と同じ位の家賃に住める国なんて他にたぶん無いでしょう?

私や家族が、日本に住む意味は、経済合理だけではありません。

-日本には、何でもある。例えば、オーストラリアより収入や物価が低いにもかからわらず、同国には来ない世界中のトップアーティスト、ファッションやスポーツのイベントが日本にはどんどん来る。オーストラリアにないディズニーランドとユニバーサルスタジオが日本には両方揃っている。

-日本では、世界最高水準の治安と、健康で長生きが当たり前に得られる。一人あたりの所得水準は世界で20何位なのに、平均寿命は世界一、健康寿命はダントツNo.1、殺人や交通事故で命を落とすリスクも世界一低い部類に入る。

-東京は、仕事と教育、生活のバランスが良い。大都市としての機能が揃い、就業や起業の機会、教育機会が十分あって、その割に水も空気もきれいで生活環境も良い。「上海北京の賑やかさと欧米先進国の生活環境が両方ある」アジアでは稀有な都市。

等々…他にもたくさんあります。日本は良いところたくさんありすぎて、それを箇条書きしたら一生かかってもたぶん無理でしょう。

あというと、日本は捉え方によっては、PCとしての魅力もまだ持っています。例えばの話、日本は英語や中国語をビジネスレベルでできる人が少ないので、それらの言語を操って仕事できれば就職に困らないし、ライバル少ないので毎年収入を上げることも十分可能。

例えば、私は日本で育ち、英語圏で5年、中国語圏で3年暮らして、英語中国語ビジネスレベルになってから日本に帰国しましたが、それ以後、就職で困ったことは一度もないし、給料上がらなかった年もありません。今後、東京を離れて、例えば北海道や沖縄に暮らすことになっても、この言語スキルがあればどこでも食っていけると思います。私にとって、日本で暮らす閉塞感なんて正直ゼロです。

いまの日本、他の皆と同じようなことしてたら先行き見通せなくて辛いかもしれないけど、皆と違うスキルセットを持っていたり、皆と違う切り口でビジネスをできる人には日本は優しい国、特に東京はチャンスに溢れた都市だと思います。

そういう面もあるので、私にとって東京は今後も、CCのみならずPCとしてもメインの存在であり続けるでしょう。とはいえ日本にはインフレがないので、PCとしてアメリカ等、他の先進国を組み込めれば磐石だと考えます。

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