各国不動産事情

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アメリカ不動産、個人と法人どちらで買うべきか?

こんにちはManachanです。いまアメリカ出張から帰国する機内でブログ書いてます。

アメリカは、海外不動産投資の本命中の本命といえます。不動産マーケット規模は世界一、不動産取引の仕組みも先進的で安心度高い。地域のバラエティも豊かで、世界最先端の都市もあれば、人口増加中の発展途上地域も多く、様々な価格帯の収益物件があります。外国人だからといって土地建物の所有権に制限もない上に、しかも通貨は世界一使い勝手の良い米ドル。

私は海外のいろんな国で不動産を「つまみ食い買い」してますが、もし一国だけ選べと言われれば、間違いなくアメリカを選びますね。

アメリカでは、不動産投資で財をなした人、リッチリタイアできた人が、おそらく世界一の数います。彼らの成功パターンを見ていると共通点があって、

1)不動産の値上がり益を得る。
2)買い換え特例(1031エクスチェンジ)を使い、キャピタルゲイン税を払わずに資産を組み替える。
3)米国遺産税の基礎控除(545万ドル→約6億円)を使って無税で相続。子孫も資産リッチに♩

具体的には、このようにします。リーマンショック後、2011年頃から、まずカリフォルニア州の大都市部がいち早く値上がりました。同州内、特にロサンゼルスやサンフランシスコは、全米でも「誰もが良いと思う」優良な場所。アメリカの洗練された投資家は、当然、投資物件を持っており、値上がり益を享受します。

2016年頃に、カリフォルニア州の多くの場所で、不動産価格はリーマンショック前のピークを上回り、「上げ止まり感」が出てきます。他州に目を転じると、テキサス州やフロリダ州など、カリフォルニアよりずっと安く家が買えて、上昇率も高い地域が存在します。

そんな時、洗練された投資家は、「カリフォルニアの物件を一つ売り」、「そのお金でテキサスの物件を二つ買う」のです。当然、キャピタルゲイン税などは払いません。上述「1031エクスチェンジ」買い換え特例は、「物件を売って45日以内に、それを上回る価格の物件に買い換える手続きに入る」のが免税の条件なので、賢い投資家はカリフォルニアで50万ドルの物件を売った後に、テキサスの27万ドルの物件を2戸まとめ買い、みたいなことをやるわけです。

テキサスはいま全米でも屈指の値上がり率ですが、数年もすれば価格も上がりきってくるでしょう。その時、広いアメリカをくまなく捜せば「いま旬な値上がり地域」が出てくるでしょうし、或いはカリフォルニアみたいな良い場所のマーケットがクラッシュして安く買えるかもしれません。そしたら、「1031エクスチェンジ」を使って無税で買い換えすれば良いのです…「わらしべ長者」を地でいく、なかなか素晴らしい蓄財法ですね。

日本に住む投資家が、アメリカの投資家みたいに「わらしべ長者」蓄財ができるのかというと、いくつか課題があります。

1)1031エクスチェンジを使えば米国側ではキャピタルゲイン税を免税にできても、個人名で買う場合は、日本側で譲渡所得税がかかる。

2)アメリカ市民でないと遺産税の相続控除が非常に低くなり(6万ドル→約700万円)、税率18〜40%の遺産税が米国でかかってくる。

最近、日本で販売されるアメリカ不動産は、「減価償却目当ての築古木造物件」が多く、私はそれに対して批判的なコラムをいくつか書いています。理由は、「課税所得が相当高い層でないと節税メリットが出ない」、「競争力の劣るアメリカ物件に業者利益をたっぷり乗せて節税と絡めて売り、客に損させる業者が少なからずいる」からですが(【海外不動産】米国の築古木造物件、人気だけれど危うい理由〜「節税ありき」は避けるべき)

さらに根本的なことを言うと、個人所得税を償却節税する前提でアメリカ物件買っちゃうと、上記1)2)の課題がクリアできず、アメリカ「わらしべ長者蓄財」の道が閉ざされてしまいます。

1)日本で償却節税するために、確定申告でアメリカ不動産を個別に申告することになるので、アメリカで物件買い換えるたびに日本で譲渡所得税を必ず払うことになる。

2)日本で償却節税するために、個人名でアメリカ不動産を買うことになるので、保有中に所有者が亡くなった場合、アメリカの遺産税がかかってくる。

つまり、償却目的でアメリカ物件買ったところで、目先の所得税を軽くするだけで、結局、日本でキャピタルゲイン税を払うことになる上に、アメリカで相続リスクにも晒される…「結局、物件売るための方便ではあっても、お客様のためのトータルな資産形成ソリューションになってないじゃん!」というのが、私の見方です。

では、どうすればアメリカの投資家みたいに、わらしべ長者蓄財ができるのか?日本の居住者ステータスを捨てずに、相続にも配慮しながらアメリカ不動産で資産形成をする最良の方法は、私の知る限りでいうと、

1)アメリカでLLC(合同会社)をつくり、そこに不動産を保有させる。

2)LLCは2名以上のメンバーでつくる(夫婦か、自分と子供、投資仲間etc.)

3)相続を視野に入れるなら、ハーグ条約に基づく国際個人信託(international trust)をアメリカでつくり、上記LLCと組みあわせる。

このようにすると、どんなメリットがあるのでしょう?

1)アメリカLLCで不動産を保有しても、上述「1031エクスチェンジ」を使って買い換えればキャピタルゲインかかりませんし、また、日本の個人確定申告にはアメリカ不動産の情報を書かないので、譲渡所得税がかからない(注: アメリカLLCで利益が出ると、その分は配当所得として日本で納税しなければなりません)。

2)LLCを2名以上の利害関係者でつくると、アメリカ物件を売却した時の連邦源泉税(FIRPTA)を回避できるし、メンバー間で持分調整や移転も容易にできる。

3)国際個人信託をつくって相続財産の受益権者を明確にしておけば、アメリカの法廷を経ずにスムーズに遺産相続手続きができ、かつアメリカで遺産税もかからない(注:日本の相続税はかかる可能性があります)。

私の関心事は、「アメリカで値上がる可能性の高い物件を仕込み」、「戦略的に借り換えを繰り返しながら」、「資産形成の途中で税負担をミニマムにしつつ」、「効率よく資産を増やしていく」ことで、その見地から最も効率的と思われる「米国LLC&1031エクスチェンジ」を使う戦略を採用しています。

租税回避が目的ではありません。国に権利を守ってもらう不動産を使って自分の資産が増えるんなら、増えた分の何割かは税金払ってもいいじゃん、という考え方です。ただ、資産形成期に税金があれこれかかるとキツいし加速もできないので、その辺は賢いソリューションを選び取っていきたいものですね。

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海外不動産、税理士に丸投げされても…

こんばんは、Manachanです。今回は、海外不動産投資に欠かせないパートナー「税理士」にフォーカスして書きますね。

「日本と海外、両方の税務申告実務に通じ、個人投資家に対して最適な税務アドバイスを行うことのできる国際税理士」は、日本人のグローバル資産形成に重要な役割を果たすはずです。が、現時点ではニーズの大きさに比べて人材が育っておらず、まだまだ未開拓な分野といえます。

日本と海外、両方の税務が分かる人が世の中に少なく、よしんば居ても法人向けで料金も高額だったりします。我々日本居住の個人投資家にとっては、「海外での申告、誰に聞けば正しい情報を得られるのか分からない」という悩みがあります。逆にいえば、これから発展余地が大きい分野ともいえましょう。優秀な税理士がいま参入すれば、間違いなく、「ライバルの少ないブルーオーシャン」だと思います。

 

ところで、日本の居住者が海外の不動産を買う場合、物件所在国と日本と、両方の国で納税する義務が生じます。

税制や税率はそれぞれの国で違いますが、世界中の多くの国では、日本で不動産持つのと同様の税金があります。購入時には印紙税や不動産取得税、保有時には固定資産税や所得税、売却時にはキャピタルゲイン税(譲渡益税)が、その代表的なものです。

海外で上記の税金を納めた後、さらに日本の確定申告で納税しなくてはなりません。但し、日本人が不動産買うような国は、たいてい、日本との間で租税条約を結んでいるので、原則として、二重課税にはなりません。具体的には、日本の確定申告の時、海外で納めた税金を「外国税額控除」を使って、差額分を納付、あるいは還付してもらいます。トータルで考えれば、結局、日本の税率で納税することになるわけです。

 

海外不動産セミナーやると、「税金の申告はどうやればいいのか?」は、よく聞かれる質問です。これ、真面目に考えると、回答するのがとても難しい質問です。

私は税理士資格を持っていない一般投資家なので、税務実務を代行したり、アドバイスすることは法律上できません。だから、「自分の場合は、こういう考えに基づいて、こういう申告を行っています」という程度の回答しかできず、それ以上詳しい内容については、「プロの税理士に聞いてください」と言う以外にないのですが、

「じゃ、具体的には誰に聞けばいいの?」というと、困ってしまいます…なぜなら、

 

・海外不動産セミナーに来る方の多くは、日本国内ですでにアパマン何棟か持っている投資家で、すでにお抱え税理士が居るケースが多い。ただ、彼らは当然、日本の税務のことしか分からないので、申告対象に海外の不動産が入ってきても、「それを、日本の税務申告上、どう処理するか?」位しかできない。

・海外(例.アメリカ)での不動産申告は、その国の税理士にお願いすることになるが、彼らとて、知っているのはアメリカの税務だけで、日本の税金に対する知識はほぼない。

・日本の税務は日本で最適化でき、アメリカの税務はアメリカで最適化することはできても、両方をトータルに最適化する税務アドバイスのできる専門家は、私の知る限り非常に少ない。

 

でも往々にして、投資家が税理士に期待する具体的な内容は、「日本とアメリカ、両方を最適化する税務サービス・アドバイス」だったりします。でも、これは極めて専門的かつニッチな仕事で、誰にもできるわけではありません。たとえば、

 

・日本国籍者がアメリカの不動産を購入する際の名義は、「個人名」、「日本の法人名」、「アメリカの法人名(LLC)」と、3つの選択肢がある。

・上記3つのうち、どれを選ぶかによって、日本とアメリカでかかってくる税金の負担が違う。たとえば、

1)日本側では…個人名で買うと、所得税(総合課税)、譲渡所得税(分離課税)、住民税などがかかってくる。法人名で買うと、それらの負担がない代わりに、法人税や事業税がかかる
⇒これは、日本の税理士が考えてくれます。

2)アメリカ側では…日本の名前(個人名or日本の法人)で買うと、アメリカ側の所得税(連邦税+州税)や源泉税、キャピタルゲイン税(=譲渡所得税)がかかるが、アメリカ法人(LLC)で買う場合、源泉税やキャピタルゲイン税を回避する方法がある
⇒これは、アメリカの税理士が考えてくれます。

3)でも、日本の税とアメリカの税をトータルで考えて、3つのうちどれを選べば一番トクかと問われると、たぶん、どちらの専門家も答えられない。

 

あと、日本とアメリカで税理士を使ったとして、両国の税理士の言うことが違っていた時の調整も大変ですが、これもオーナーが総合的に判断しなければなりません。

私は以前、こんな体験をしました。アメリカの税理士が、アメリカでかかる税金をゼロにするために、いろいろなアイデアをくれるのですが、その中に、

 

・BVI(英国領バージン諸島)法人を使って完全免税にするスキーム

 

が含まれていました。具体的には、「資産規模が一定以上になると、アメリカ国内のLLCだけでは完全免税にできないので、タックスヘブンとして有名なBVIに法人をつくり、その傘下にいくつかのアメリカLLCを持たせることにより、親会社も免税、LLCも免税で、とてもハッピーでしょ♪」と自信満々のご説だったのですが、

でも、彼がそれを言う時、私が日本の居住者で、日本の税金を払わなきゃいけない立場であることが、すっぽり欠落しています。自分が代表をつとめるBVI法人なんかつくった日には、「タックスヘブン税制」が適用されて、結局、日本の税率を払わなければなりません(=BVI法人で上がる受動的所得が日本で雑所得として課税されてしまう)。

…そういうこともあるので、日本とアメリカ、両方の税制を深く理解した上でアドバイスをしてくれて、かつ申告実務をリーズナブルな価格でやってくれる、知恵袋的な専門家が欲しいと、いつも願っていますが、現実はなかなか難しいですね。今後長期にわたり、懸案事項になるでしょう。

 

繰り返しになりますが、海外不動産セミナーで、購入後の税務申告について質問を受けた際、「専門の税理士に聞いてください」という答えでは、本当の意味で質問に答えたことになりません。税理士だって、問題丸投げされても困ってしまいますよね。

とても難しいこととは思いますが、もし可能であれば、「日米双方の申告実務に通じた、○○税理士を紹介できます。費用は○○かかります」位のレベルの答えは欲しいところですね。

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資産を守る東南アジア投資、何それ?

おはようございます、Manachanです。

日本に海外不動産投資なる言葉がほとんど浸透していなかった2011年2月、私は東京で、「アジア太平洋大家の会」を旗揚げしました。奇しくも、その1ヶ月後に東日本大震災が起こり、計画停電や放射能騒ぎなど、いろいろゴタゴタがあって活動は2か月ほど休止。でも世の中が落ち着いてきた6、7月頃から、ものすごい勢いで会員数が増え、海外不動産セミナーを開催すれば、全く広告費かけずに30~50名は集客できる時代が来ました(あの頃は、我々のセミナー以外に選択肢が少なかったもんね…)

会を立ち上げて6年半になりますが、いま振り返っても、震災直後のあの頃ほど、「資産を外国に出したい」日本人富裕層の燃え盛る熱気を感じた時期は他にありません。

 

当時、隆盛を極めていた話が、「マレーシア不動産投資」でした。海外不動産で「旬」な国は、東南アジアの場合「マレーシア」→「タイ」→「フィリピン」→「カンボジア」→「ベトナム」と、目まぐるしく移り変わりましたが、2011~12年頃のマレーシア投資ブームは、その後のどの時代の、どの国の不動産ブームよりもはるかに凄かったです。

ジョホールバルの新築コンドミニアムが、2日間で600戸も日本で売れた」みたいな話があった位で、まるで中国人バイヤーを彷彿させる勢いがありました。あの頃は、1ドル=80円程度の超円高時代でしたら、それも大きな要因でしたね。

 

その頃、どんな宣伝文句で、日本人にマレーシア物件を薦めていたか…今振り返ると滑稽な話です。私、当時から違和感ばりばりでした。

 

【当時の典型的なセールスレター】

1)日本経済はほとんど成長しておらずデフレ状態が続いています。日本は少子高齢化が進み、労働人口が減る一方。いずれ日本の国債も破綻すると多くの経済学者も言っています。今の時代、日本円だけで貯蓄することは、安全な方法とは言えなくなっています。

2)そこで、日本円以外の外貨で資産を持つ事をお勧めします。単純に、日本円をアメリカドルなどに換えて、外貨として資産を持つのも良いでしょう。

3)ここでは、マレーシア不動産投資をお勧めしていますがマレーシアの不動産投資をするということは、外貨で資産を持つ事を意味します。

 

【私が感じたこと】

1)と2)は、分かります。要は、「資産を守りたい」。そのために、資産を各国・各通貨に分散させたいんですよね。それはセオリー通りの判断。

でも、なぜ3)なの?「資産を守る」という目的を達成する「手段」として、どうしてマレーシアの不動産を選ぶの?その選択のどこに妥当性があるの?

 

資産を守るために外貨に換える時、普通の人は、自国通貨より信用度が高い通貨を選びます。たとえば、ニュージーランドに住んでる友人は、NZドルが貯まると、すぐ豪ドルに換えてました。でもオーストラリア人が、手持ちの豪ドルをNZドルにせっせと換える…みたいな話は、聞いたことありません。

あと、世界中どこへ行っても米ドルはたいてい通用しますね。これはアメリカ人が旅行して金を落とすからというよりは、むしろ世界各国の人が、自国通貨を米ドルに換えたい根強いニーズがあるからです。資産保全の動機が強いのは言うまでもありません。

 

それを踏まえて、日本人が資産保全の目的で、日本円の他に持つべき通貨・資産は何なのかを冷静に考えた時、本命は「米ドル」になるはずです。対抗馬として「ユーロ」があり、資源国通貨「豪ドルかカナダドル」位は持っててもいいと思うけど…そこにいきなり、「マレーシア・リンギット」みたいな新興国通貨を持ってこられても、どうなんでしょうね?

マレーシア・リンギットは、マレーシア国内と、タイ深南部の一部都市でしか流通しません。日本に、リンギットをそのまま持ってきても、換金するのさえ難しいです。一方、日本円をマレーシアに持っていけば、どの銀行・両替商でも、かなり良いレートで換えてくれます。それが、現時点での円とリンギットの信用力・通用度の差といえます。

 

日本円の価値が今後どうなるか分からないとはいえ、現時点せっかく世界的な信用度の高い日本円の資産を持ち、かつそれを「守りたい」のに、業者に乗せられて、せっせと、マレーシアリンギットやタイバーツのリスク資産に換えるのって、賢明なんだろうか?

フェアにみて、マレーシアやタイは、現時点では、「経済成長の恩恵で将来大きく育つかもしれないリスクマネーを置く国」ではあっても、「資産を安全に守る国」とはいえないはずです。

あとそれ以前に、新興国では不動産市場が発展途上、取引データも未整備でガバナンスも弱い。建設の工期管理、完成後の賃貸管理、将来時点の売却…どれをとっても確度の高い予測が難しい。首尾よく上振れする可能性は否定しませんけど、常識的に考えて、新興国不動産は「資産を守る」手段としては選定されない投資対象だと思います。要は、「値上がり期待の投資」以外の何物でもない。

 

とはいえ、2011~12年頃は、「超円高」という、資産外出しに絶好のタイミングではありました。当時、思い切って外貨資産に換えて、いま、為替の利益でウハウハな人も少なくないでしょう。

そこで、当時、たくさんの日本人が不動産を買った、「マレーシア」、「フィリピン」、「タイ」の各通貨の対円レートがどう変わったか、みてみましょう。

 

1)マレーシア(通貨:リンギット)

2011年7月 26.89円
2012年7月 25.34円

現在(2017年7月) 26.08円

あまり為替でトクしてませんね。2013年以降に買っちゃった方は露骨に為替差損。

 

2)フィリピン(通貨:ペソ)

2011年7月 1.87円
2012年7月 1.91円

現在(2017年7月) 2.21円

地味に、じわじわ上がってきたので、2011~12年円高の時代に買ってればトクしたかも。

 

3)タイ(通貨:バーツ)

2011年7月 2.64円
2012年7月 2.54円

現在(2017年7月) 3.30円

ここ5~6年で、2割強、対円レートが上がっていました。2011~12年に買ってればよい選択でしたね。

 

でも、同じ期間中、対米ドルで比べると、マレーシア、フィリピン、タイ…いずれの通貨も価値を落としています。

1)マレーシア(通貨:リンギット)

2011年7月 0.332ドル
2012年7月 0.317ドル

現在(2017年7月) 0.233ドル

 

2)フィリピン(通貨:ペソ)

2011年7月 0.02317ドル
2012年7月 0.02398ドル

現在(2017年7月) 0.01986ドル

 

3)タイ(通貨:バーツ)

2011年7月 0.03266ドル
2012年7月 0.03173ドル

現在(2017年7月) 0.02944ドル

 

信用力の低い新興国通貨で資産を持つ唯一のメリットは、「将来、経済発展して上振れする可能性」位なんですが、米ドルに対するパフォーマンスをみると、これまで5~6年間は思わしくありませんでしたね。あと5年、10年後、どう変わっていくのかは分かりませんけど…

資産保全が主目的であるならば、円のほか、「主力は米ドル」を前提に、「お金に余裕があれば新興国資産を少々」程度で組む方が良いかと思います。

もっとも、マレーシアやタイが好き、行く用事がある、いざという時セカンドホームにしてもよい…という「実需」が念頭にある方や、「リスクを承知で、それでも東南アジアの成長に賭けて、大きく育てたい」と思う方は、その限りではありませんけどね。

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海外節税物件とモルヒネ依存症

こんばんは、Manachanです。今回も、「海外不動産と節税」という、旬なテーマで書きますね。

最近、日本の海外不動産販売のトレンドは、「減価償却&節税」。どちらかというと国内不動産専門の感のある「健美屋」さんのコラムにも、ついに、この話題が出てきました。

米国投資は節税策としても注目、中古住宅を最短4年で減価償却

 

「米国の不動産を買って、日本で節税できる」…販売側にとっては、まさに魔法のキーワードでしょう。日本在住の人に、わざわざ、海の向こうの、遠い土地の不動産を買ってもらうには、強い動機づけが必要。「目の前の税金を安くできる」のは、動機づけとしては最強の部類に入るでしょう。

ですが、一投資家、不動産愛好家の視点でいうと、「節税ありきの海外不動産販売」には、あまり賛同する気になれません。理由は二つあります、

1)ちょっと節税するために、ベストとは言い難い物件を買うよりも、ちゃんと収益のあがる物件を選んで買った方が、確実に資産が増えると思うから。

2)商品設計が、「最初の4年間、減価償却で節税できても、5年目以降、重税がのしかかってくる」想定ゆえ、買った人が節税依存症になってしまうリスクが大きいから。

 

1)については、すでに、6月9日のブログで詳しく書いたので、今回は割愛します(サラリーマンが海外の築古不動産で節税すべきか?-後編

今回強調したいのは、2)です。私の視点でいうと、「節税ありきの海外不動産投資商品」は、よほど注意して使わないと、購入者を不幸にしてしまうリスクが大きいと考えます。私はこれを、「モルヒネ投資」、「節税依存症投資」と呼んでいます。なぜそう思うのか?

 

健美家コラムの例にならって、「課税所得1000万円のサラリーマンが、アメリカで5000万円(うち建物価格4000万円)の不動産を買い、最初の4年間は1000万円づつ節税(その期間は所得税、住民税ともゼロ)」、「彼が購入後5年間、課税所得1000万円のサラリーをもらい続け」、「購入6年目に5000万円(プラスマイナスゼロ)で売却する」前提で書きますね。

ところで、「課税所得1000万円のサラリーマン」と、「年収1000万円のサラリーマン」とは少しレベルが違います。前者は、会社から受け取る給与収入から、基礎控除、社会保険料控除などを引いた残りが1000万あるわけで、少なく見積もっても1300~1400万円以上のサラリーを得ています。

 

課税所得1000万円以上ある給与所得者は、2014年時点で日本全体の4.1%を占めるに過ぎませんが、彼らは所得税全体の49.1%を納めており、まさに日本の国庫を支えている人たちです。逆にいえば、負担感も並大抵ではないのでしょう。

 

日頃、重税感に苛まれる所得層の人にとって、海外不動産を買って節税しようというセールストークは、確かに魅力的に聞こえるでしょう。課税所得1000万円あれば、年間の所得税が176.4万円、住民税が100.7万円、併せて277.1万円を国庫に納めているわけですが、もし米国の5000万円(建物比率80%)の不動産を買って、自分で確定申告すれば、最初の4年間に限っては、所得税・住民税とも、タダになる計算になりますから、それだけ聞くとむちゃくちゃ魅力的ですよね。

 

 

もっとも、この物件を売却したら、6年目以降であれば、譲渡所得税を払わなければなりませんが、確かに、健美家コラムの言う通り、それでも税金上はトクする計算になります。

購入後4年間の節税効果 11,084,000円 (=2,771,000 x 4年)

売却後の譲渡所得税 8,126,000円 (=40,000,000 x 20.315%)

差し引き 2,958,000円のトク

 

しかし、この物件を買った人に何が起こるかを冷静に考えてみると、私は、お勧めする気になりません。

・購入後1~4年目までの、いずれかの時点で、最低一度は税務調査に入られ、調査官にいじめられるでしょう(私も経験しました・・・涙)

・購入後5年目が辛い!これまで4年間かからなかった277万円の税金が突然かかり、家計を圧迫するでしょう。

・6年目で売却する場合、キャピタルゲイン出なくても、計算上812万円の譲渡税がかかります。どうやって捻出するのでしょう?

 

売却時点で、アメリカの物件が大幅に値上がるか、或いは米ドルに対して大幅な円安になっていれば良いですが、そうならなかった場合、わざわざ800万円の税金払うことが分かってて売るでしょうか?いやそれ以前に、5年目に突然かかってくる税の痛みを回避するために、多くの人は、5年目に新たな減価償却物件を買うでしょう。また業者も当然、「5年目買い増し需要」を期待するでしょう。

これって、「痛み止め(税負担アップ回避)のために、モルヒネを打ち続ける(海外築古物件を買い続ける)」のと、本質的には同じことだと思います。

なお、日本の譲渡税を回避するために、償却後の簿価(1000万円)で、自分の設立したアメリカの会社に売っちゃえばいいじゃんという考えもあるでしょうが、売買履歴データが皆にガラス張りのアメリカで、5000万円で買った物件を1000万円で売るような不自然な取引が許されると考えない方が良いです。下手したら、アメリカで過酷な追徴課税が待っているでしょう。

(※あと言うと、今から5年も経てば、国税が海外不動産を使った償却スキームに対して課税強化してくると思うので、買い増ししても節税メリットなくなるかもしれませんね。)

 

節税のための海外不動産って、結局、何なのでしょう?世にあまたある「節税スキーム」と同様、本来払うべき税金の繰り延べ、つまり問題先送りにしかなりません。

投資家のカルチャーは「先憂後楽」…私たちは、いま買いたいものを少し我慢して、将来、財産を大きくすることを楽しみにする人種なのですから、海外節税物件みたいな、「今をラクにするために、後にツケを回す」ような投資(?)は、生理的に楽しめませんし、お客様にもすすめたいとは思いません。

 

あと、シミュレーション上の節税効果が、物件価格に比べて大したことないことにも注目すべきです。仮に、売り側の業者が、6%以上、利益を余分に上乗せして売っていたなら、節税利益をすべて食われていることになるのです。

仮に20%余分に利益が乗った物件を買ってしまったら、それこそ、「300万円節税するために1000万円を業者に貢い」という、笑えない結果になります。

現に、日本に紹介されている、節税を全面に押し出す物件は、普通に市場流通している物件というよりは、むしろ日本で節税できるスペックを備えるために作為的につくった物件であることが多く、アメリカ人に売りにくかったり、あるいは、「どう考えてもガッツリ利益乗せてるじゃん!」と思うものも、少なからずあります。

市場価格に比べて割高な物件を買ってしまったら、出口で損切りのリスクが高まるのは言うまでもありません。

 

もっとも、節税云々以前に、アメリカで買った物件が大きく値上がりして富をもたらしてくれたら、上記の懸念は全ては解決するはずです。だからこそ、収益性に優れ、リスクの少ない物件を選ぶ選球眼をつけるのが先決だと思うのです。

減価償却・節税は、あくまで投資の結果に過ぎません。むしろ、投資収益がちゃんと上がって、それに加えて節税メリットもあればラッキー、くらいに考えるべきだと思います。

 

最後に一つだけ、簡単なTipsをシェアしたいと思います。もし、販売業者の物件資料に

「NET利回り 4.0%」
「NET利回り(減価償却加味) 7.5%」

などと書いてあったなら、減価償却を含む数字は、即、ガン無視しましょう。そして、この地域でNET利回り4.0%が妥当であるのか、もっと良い投資機会がないかどうか、米国不動産投資の経験者をつかまえて調べてみましょう…それが、海外投資リテラシーを上げる第一歩になります。

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海外の家賃保証物件って実際どうなの?―後編

こんばんはManachanです。いつもご愛読ありがとうございます。

先ほど、Lifull Homesさんの海外不動産セミナーで講演してきました。今回、出展していた販売業者さんの大多数が、「家賃保障」か「買取保障」つきの物件を売っていたことが非常に印象的でした。現時点では、「家賃保障・買取保障つきの新築物件」か、「減価償却狙いの築古物件」が、売れる海外物件の条件であるようですね。

いま旬な、この販売スタイルを、私の視点でバッサリ斬る!… もとい、整理して解説しますね。

 

前回(前編)では、海外不動産「家賃保障」の裏側のからくりについて解説しましたが、今回は主に、「買取保障」に関連した内容をお伝えします。最重要キーワードは、

二次市場(中古流通市場、Secondary Market)

 

二次市場とは何か?まず解説しますね。

不動産として市場流通する「建物」は、まず、「建設会社やデベロッパー」が供給して、初回購入者に販売されます。販売価格は、まず供給者が決めて、売れ行きに応じて値引きしたりして、市場メカニズムで価格形成されます。これが「一次市場」もしくは「新築流通市場」と呼ばれるものです。

ところで不動産は息の長い商品で、通常、数十年~数百年の寿命を持ちます。その過程で、何度も所有者が変わるのが普通です。「現オーナー」から「別のオーナー」に、中古物件として販売される時、立地、築年、建物コンディション、間取り、土地面積、融資環境などの要因を考慮し、市場メカニズムで価格形成されます。これが「二次市場」または「中古流通市場」と呼ばれます。

 

日本では、不動産の新築(一次)市場と中古(二次)市場は明確に分かれています。「新築市場」の流通価格は高く、「中古市場」になると、築年に応じてどんどん安くなるのが特徴です。

2011年、東京都区部マンションの統計をみると、一目瞭然ですね。

【一次市場】
新築価格 5339万円

【二次市場】
築1~5年 4742万円(新築時の88.8%)
築6~10年 4241万円(新築時の79.4%)
築11~15年 3810万円(新築時の71.4%)
築16~20年 2771万円(新築時の51.9%)

 

日本の場合、中古物件になると値段は下がりますが、逆にいえば、「値段さえ下げれば買い手は必ず見つかる」ので、「二次市場」はしっかり存在するといえます。6年前(2011年)時点では「築20年の中古は新築の約半額」というデータでしたが、今では安い価格を求めて中古を買い求める人が増えたので、築20年で状態の良い物件なら「新築時の6~7割の価格」でも十分買い手がつく印象です。

二次市場が存在し、かつ売買データが十分な数あれば、「○年後の想定販売価格が○○○○万円」といった予測が可能になります。保有期間中の家賃収入と合算すれば「全期間利回り」や「IRR(内部収益率)」の算出も可能。たとえばリーウェイズ社のGateというサービスは、人工知能によるビッグデータ解析を使って、日本全国の収益物件を同じ指標で評価できるようになっています。

 

一方、欧米諸国に目を転じると、日本と比べてさらに中古住宅の流通が盛んで、二次市場はしっかり形成されています。日本と違うのは、物件が中古になっても新築時の価格とさほど変わらず、かつ築年の影響を受けにくいことです。築年数が経ってくれば当然メンテナンス費用がかかりますが、必要な費用をかけて建物の状態を良好に保てば、新築時以上の価格で売却することも十分可能です。

 

下記はアメリカ、フロリダ州Naplesという街での住宅価格の推移(10年間)を示したものですが、日本と違ってアメリカでは住宅価格が築年数の影響をほぼ受けないことが、よく分かりますね。

 

二次市場での流通を考えた時、問題が大きいのは新興国の物件。たとえば、東南アジアの多くの国では、昔の日本と同様、新築販売市場はあっても中古流通市場が未確立。中古物件の売買に携わる不動産事業者やプロフェッショナルがまだ少ない状態です。

だから、「中古になったら、いくらで売れるのか?」、「それ以前に買う人がいるのか?」、「誰に頼めば売ってくれるのか?」、現時点ではあやふやで、出口価格が予測不能。日本と違って、妥当性をもった全期間利回り算出などできません。

ただ、長期間保有していれば、東南アジアの不動産業界も今よりは進歩しているでしょうし、経済発展に伴い地元民の購買力も上がるでしょうから、値上がりというかたちで利益確定できる可能性はあるのでしょう。その時期を早めるためには、できるだけ安く買うのが基本でしょうね。

 

そろそろ本題に移ります。いま日本で、賃料保障&買取保障つきで売られている海外物件の多くは、「学生寮」や「介護施設」など、これまでにないタイプ、「新しいアセットクラス」に属するものです。

英国が典型的ですが、「学生寮」も「介護施設」も、ここ数年で出現し、運営によって高収益を上げるビジネスモデルで、投資家の資金を直接調達して供給されています。ある意味、日本の「民泊物件」にも似ていますね。

私、英国各地で、「学生寮」や「介護施設」を視察したことがあります。学生寮はライバルが少ないエリアに建ち、ワンルームで10万円くらいの月額家賃を取る。介護施設は老人から月額40万円くらいの介護料を取って、かつ東欧出身の安い看護師を使って運営される…現時点でみれば、投資家に利回り返すだけの事業利益は確かに出そうな気がします。

 

でも、投資家として気になるのは、

1)数年後、同じカテゴリーの物件が大量供給されて、賃料水準が崩れるリスクはないか?

2)数年後、売りたくなった時、学生寮ないし介護施設として、いくらで売れるのか?

3)もし、学生寮や介護施設の運営会社が倒産・廃業した場合、どのような出口が取れるのか?

 

2)と3)は、「二次市場が未確立」という問題に直結します。英国という先進国にあっても、「新しいアセットクラス」ゆえ、中古物件として流通した歴史がない。だから出口価格が予測できないのです。特に「介護施設」は、都市部を離れた田園地帯にあるケースが多く、将来、もし介護施設として運用できなくなったら、果たしてこの場所に誰が住むのか、いくらの家賃が取れて、いくらで売れるのか、想像するのさえ難しい。

 

そろそろまとめます。

学生寮、介護施設のような、新アセットクラス物件は、「出口に不安」が残る。まともな投資家ほど、その点が気になる。だから、「買取保障」をつけて売るのです

 

「買取保障」が契約書に明確にうたわれている場合、投資家のリスクは、「運営会社の倒産リスク」と、「契約書上の義務不履行リスク」にしぼられます。だから、こういう物件を買う際は、ぶっちゃけ物件の立地や施設内容は関係なくて、むしろ運営会社の経営体制や財務状態、契約書上の買取保障に関する条項に注意する必要があります。特に下記については完璧に理解しておく必要があるでしょうね。

・買い手が、どのような条件のもとで、購入をキャンセルできるか?ペナルティはあるか?
・運営会社が、どのような条件のもとで、買取の約束を拒否できるのか?ペナルティはあるか?
・運営会社との間に疑義が生じた場合、物件所在国に消費者保護センターなど、低コストで調停してくれる機関が存在するか?誰のサポートを得て異議申し立てをするか?

 

一見不動産に見えますが、限りなく、金融商品に似てますね。しかも、市場流通する金融商品と違い、アセットマネジャーも居ない、出資者への年次報告義務もない…極めて不透明でガバナンスがきかない「ユルユルな」金融商品といえます。もっとも、ユルユルでリスクが高い分、年7~9%とかのNET利回りが得られ、かつ不動産権利がつけばそれで良いという考え方もあると思います。

一方で、通常の住居物件。都市部の、中古住宅の需要が十分ある場所に存在する物件なら、そもそも、買取保障をつける理由がないでしょう。また、賃貸市場がまともなら、賃料保障をつける必要もない。不動産としての価値が十分ある物件なら、小細工しなくても売れるし、ちゃんと運営していれば収益あがるはずなのです。

売る側が、なぜ、「賃料保障」や「買取保障」するのか、その裏の理由をよく考えて、本質を見極めて判断した方が良いと思います。

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海外の家賃保証物件って実際どうなの?―前編

こんばんは、Manachanです。今回のブログは、最近の海外不動産販売で一種の基本形となっている「家賃保障物件」について、私の思うところを書きます。

最近、先進国、新興国を問わず、海外不動産セミナーでよく出てくる宣伝文句が、

「家賃保証付き」(例.購入後5年間、実質利回り6%保障)

「買取保障付き」(例.デベロッパーが購入価格で買い取り保障)

 

確かに、勝手知らぬ、海の向こうにある物件のこと、「ちゃんと家賃が入るのか?」、「将来、売って現金化できるのか?」と不安に思う購入者は多いわけで、そこに「家賃保障」や「買取保障」がついてくれば、確かに大きな安心材料になります。

但し、一見安心に見えることが、オーナーの投資利益を最大化するのかというと、それは全く別の問題です。今回(前編)では「家賃保障」、次回(後編)では「買取保障」を中心に、詳しく解説します。

なお私は、「家賃保障」そのものが悪いとは思いません。物件所在地のマーケットのなかで、収益物件としてちゃんと成立する物件なら投資対象としてアリだし、その前提の上で、外国人購入者を安心させる一環として「家賃保障」や「買取保障」をつけるなら尚良しでしょう。

 

しかし、私たちが気をつけるべきは、「家賃保障」をうたっている物件は、玉石混交。つまり、良いものと良くないものが混在していることです。平たくいうと、

・良い家賃保障物件とは、「売値に余分な利益を乗せず」、「通常のサブリースとして運用する」物件です。

・悪い家賃保障物件とは、「売値に余分な利益を乗せて」、「それを保障家賃の原資としている」物件です。

 

言葉だけでは分かりにくいので、図に表してみました。私が知る限り、最も悪質なのは、「保障賃料の全てを、売値に上乗せした利益から支払う」パターン。たとえば、

・「5年間、ネット6%の保障家賃」を売り文句として、
・「その30%を、デベロッパーがまるまる売値に乗せて、現地の事情に疎い外国人に売る」

 

こんなもの買っちゃったら、投資として即アウト、とまでは言いませんが、利益確定まで長年、不本意な塩漬けを強いられるでしょう。要は「100の値段で売買されているものを、130の値段で買う」わけですから、かなりの確率で損するのは間違いない。たとえば、市場価格が毎年3%づつ上がったとしても、

・購入後、5年以内に売却する場合、買った値段より15~30%、損切りしないと売れない。

・保有し続けても、家賃保障期間が切れる6年目以降、賃貸の裏付けがなければ利回りゼロになる。そもそも、利益を3割も余分に乗せて売るような強欲&焼畑農業デベロッパーが、6年目以降、客のために骨折るとは思えないから、かなりの確率で放置プレイ実施される。

 

次に、私が世界中で見聞したなかで、かなり多いと思われるパターンが、「保障家賃の一部を、売値に乗せた利益から充当する」ものです。たとえば、

・「5年間、ネット6%の保障家賃」を売り文句として、
・「デベロッパーが15%を余分に売値に乗せて外国人に売り」
・「保障家賃の半分(3%×5年間
)を、売値に乗せた利益から充当する」

 

こういう物件を買ったら、どうなるか?上述「悪質パターン」ほど酷くはありませんが、それでも「100の値段で売買されているものを115の値段で買う」わけなので、期待した収益が上がらず、面白くない結果になるでしょう。

・購入後、5年以内に売却する場合、買った値段より0~15%、損切りしないと売れない。

・保有し続けても、家賃保障期間が切れる6年目以降、賃貸利回りが3%に半減する。

 

最後に、「投資家にとって良い家賃保障」物件も存在します。それは、「デベロッパーが余分な上乗せをせず、フェアな市場価格で売り」、「入居者から得られる賃料のなかから、管理会社の利益を引いた分を、投資家に返す」パターン。要は「通常のサブリース」です。

・「5年間、ネット6%の保障家賃」を売り文句として、
・「利回り8%で賃貸に出し、2%の管理会社利益をひいて、6%をオーナーに返す」

 

こういう物件を買えたなら、失敗するリスクはかなり少なくなります。賃貸経営が順調で、かつ売買価格も順調に伸びるような状況が続くのなら、

・「賃貸収益が安定的にとれる」上に、

・「いつの時点で売っても売買益が出る」状況です。

 

ところで、私がなぜ、この記事を書いて皆様に注意喚起しているかというと、「海外物件販売の舞台裏を結構知っちゃってる」からです。私は海外物件を購入する投資家であるだけではなく、海外デベロッパーから直接、日本でのマーケティングを依頼されることもあるし、彼らデベロッパーの収益構造や、土地、建物、内装、デザインなどの原価構造も、いろんなルートから情報入るので、その辺の販売業者よりはずっと深く理解している自負があります。

でもって、実際問題として、「外国人にたくさん売るために、家賃保障をつける」、「その分、売値に上乗せすればいいやあ」と安易に考えてるデベロッパーが、国を問わず、かなり多いです。彼らはオーナー利益を第一に考えてない、いやそれ以前に、金利負担が高い環境下で、銀行や株主のプレッシャーを受けながら建て売りするわけですから、一日も早く、売り切りたい。売るためには家賃保障でも何でもやるわけです。

 

そのデベロッパー的思考のなかに、上述した「悪質なタイプの家賃保障」が当然含まれますから、投資家・オーナーとしては、その地雷を踏まないよう、注意する必要があるのです。海外の物件で相場より高いか低いかの判定は難しいですが、私の場合は愚直に、次の方法で仮説を立てながら判断しています。

・ポータルサイトを調べる、現地の友人にヒアリングする等の方法で、周辺の売買事例と価格比較する。
・土地、建物、内装・デザインなど、単位コストを積み上げてデベロッパー利益をざっくり試算する

(もし、海外で相場より高く買っちゃったかもしれないと思った方は、私に相談してくださいね。)

 

そもそも、なぜ家賃保障する必要があるのでしょう。たとえば、「東京の恵比寿駅近」で、「今風のデザイン築浅1LDK」を、「坪400~500万円くらいの市場価格」で売るなら、わざわざ家賃保障つけなくたって、飛ぶように売れますよね?海外だって事情は同じで、「利便性の高い都市中心部」や「雇用機会にすぐアクセスできる場所」、「名門学校の学区内」みたいな好立地で、「市場価格と大差ない価格」で売るなら、「○年間△%保障」なんてつける必要なく、普通に売れるはずです。

そこをあえて、「○年間△%保障」をつけて売るわけです…投資家なら、「売れない理由がどこかにあるはず」と、まず疑ってかかるべきでしょう。大抵は、「立地がいまいち」とか、「地元民の払える金額より値付けが高い」とか、あるいは「学生寮や介護施設のような、従来にない新しいアセットクラス」とか、大方そんな理由になります。

もちろん、中には良質なものも混じっているので、「家賃保障だから」といって敬遠する必要まではありませんけどね。要は、収益物件としての実力を、個別に、ちゃんと見極められれば良いのです。

 

最後に…海外の家賃保障物件に関しては、上述「売値に上乗せリスク」のほか、「出口リスク」を抱えているケースが多く、一般論として、私は慎重です。詳しくは後編でお話しします(後編に続く)。

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北京~上海間、新幹線旅日記

おはようございます、Manachanです。中国出張3日目、いま上海・虹橋空港近くのホテルに滞在中。昨日、北京から長駆、1300km以上を新幹線で移動し、上海に来ました。

6月18日、日曜日、首都・北京は気温36℃の猛暑。タクシーで北京南駅へ到着したのが正午12時頃でした。とても立派な巨大な駅舎ですが、ここは中国なので、常に、あふれんばかりの人間がうごめいています。日本だと、JR新宿駅か初詣、縁日でもない限り、あり得ないレベルの人ごみが、ここにはありました。

荷物チェックを済ませてコンコースに入ると、目の前に、自動の券売機がたくさん置いてありました。操作してみると、出発駅や到着駅、出発時刻、座席の等級に応じて簡単に切符買えそうでしたが、よく見たら、中国のIDカードがないと買えない仕様になっており、日本のパスポートしか持ってない私は、あえなく撃沈。仕方なく、巨大な駅舎の向こう側にある有人の窓口まで歩いて、列に並んで買わざるを得ませんでした。

券売機に限らず、今時の中国って、いろんな便利なものがあるのに、外国人訪問者には使えないものが余りにも多くて、歯がゆい。たとえば、スマホにアリペイ(支付宝)の自動決済アプリ入れて、レストランで食ったらスマホでバーコード読み込んでピッ、ビジネスホテル泊まってもスマホでピッ…とても便利なんですが、アリペイに加入するには、中国の携帯番号が必要で、その携帯ひとつ買うにも身分証明がうるさくて、海外からの短期出張者ではなかなか恩恵にあずかれません。

でも、アリペイがないと、結構不便なんですよね。昨日泊まった北京のサービスアパートなんて、クレジットカードの読み取り機がなくて、アリペイか人民元現金しか受け付けないと…私は、人民元現金をそんなに持ち歩かないので、スマホでアリペイのアカウント加入しようと奮闘したんですが、結局、身分証明の壁に阻まれ、撃沈。

昨日の新幹線だって、実はスマホで予約できる便利なアプリがあるんですが、あれも結局、中国の携帯番号にSMSを受信してはじめて予約できる仕様になっています。アプリで事前予約したければ、中国在住の友人に予約取ってもらうしかないんです。

「Google、LINE、Facebookが使えないネット環境」もそうですが、「中国に住んで中国製のアプリだけ使っていれば便利だけど、外国から訪問するとかなり不便」、ある意味、「人口14億人、世界最大のガラパゴス」なのが中国ですね。なんとなく日本と似てますけど、ガラパゴス度合いは、やっぱ中国の方が強烈だな。巨大な国だから、外国に合わせてやり方変えたりしないし、14億人の慣行を変えさせるのはすごく大変だし…距離表示にマイルを使い、客に20%のチップを払わせる独自のやり方を変えないアメリカのお国柄と、中国はよく似ています。

 

新幹線の話題に戻りましょう。北京南駅の有人切符売り場で、私が予約できたのは、「13:40発、上海虹橋行き、窓側二等席」でした。上海までの運賃は、

2等席  553元(約9000円)
1等席  933元(約15000円)
特等席 1748元(約28000円)

北京南~上海虹橋間の走行距離は1318km。だいたい、東京~鹿児島中央間に相当します。東海道・山陽・九州新幹線を使って同区間を移動する場合、通常の指定席で28000円くらいしますので、それは中国での特等席の値段に相当。2等席であれば、「だいたい日本の3分の1」の値段で移動できる計算です。かなり安く感じますね。

 

13:40、北京南駅を定刻に出発した新幹線。中国らしく、いきなり満席、稼働率100%。乗客をみると、北京市内に住んでいるとは思えないような、田舎風の格好、話し方をしているおっさん、おばさんが多数。子供連れも多数…推測するに、沿線の山東省方面から、家族で北京に遊びに来たとか、親戚宅を訪ねてきたような方々なのでしょう。日曜の午後なので、自宅に帰るにはちょうど良い時間帯なのでしょうね。逆に、北京に住んで、沿線地域に観光に行くように見える人は、ほぼいませんでした(※話し声を聞いていれば、北京の人間なのか、山東省あたりの人間なのか、だいたい分かります。以前、私は大連に住んでいました。大連の地元民は、山東省から海を渡ってきた人たちの末裔で、基本的には山東省方言を話します。)

よく考えれば、北京を代表する万里の長城、故宮など観光名所も、来てる客の圧倒的多数は中国人ですもんね。以前は遅い国鉄電車やバスで来てたのでしょうが、最近は懐具合が豊かになって、新幹線で北京観光に来る中国人も増えたのでしょう。

 

北京を発車して、2時間弱、419kmを移動して、山東省の済南西駅に着きました。とても大きな駅で、北京で乗った乗客の大部分がここで降りました。やっぱり、山東省人が北京に行くために新幹線使ってたのね。あと、車窓からみえる済南市街地の大きさにも驚きました。こんなに発展していたのかと…

済南西駅で乗客がほぼ入れ替わりましたが、さすが中国、満席状態は変わりません。私の隣の座席、北京~済南間はスマホばっかりやってる痩せたお姉さんでしたが、済南からは肥ったお姉さんが乗ってきて、南京で降りるまでの3時間、彼女ずっと爆睡していました。

済南からさらに南下すると、江蘇省の徐州東駅で、多くの乗客が乗り降りします。ここは、北京から688km、上海から630kmで、ほぼ中間地点になります。この徐州あたりを境に、沿線の風景が徐々に変わります。「南船北馬」とはよく言ったもので、徐州以北は小麦作、以南は米作エリアであるよう。田畑の風景も南に行くほど緑が濃く、日本(特に西南日本)のそれに近づいていきます。特に、安徽省の蚌埠あたりは山や丘も多く、田んぼの一区画も小さく丁寧に耕され、古き良き日本の原風景を見ているようでした。

 

長江大橋を超えると、南京の大きな市街地が広がります。ここまで来ると、上海まであと1時間20分。南京~上海間は風景がにわかに都市的になり、農地のなかに高層マンションや戸建住宅、工場が混在する風景になります。日本の東海道新幹線の沿線に似てますね。なお、南京南駅で乗客の多くが入れ替わり、ここから先は、上海を目指す短距離利用者の世界になります。この辺まで来ると、乗客が話す言葉も、北京や山東省のアクセントはなくなり、皆さん完全に上海風の話し方ですね。

19時38分。上海虹橋駅に無事到着。北京から5時間58分の長旅、これにて完了♪

 

今回、中国新幹線に乗ってみて、感じたこと。

・北京~上海間を、通しで利用する客は少ない。
・乗客の多くが、1~2時間程度の中距離利用(北京~済南、済南~徐州、徐州~南京、南京~上海)
・客が入れ替わっても、満席状態が常に維持されていた。中国では大都市以外にも、膨大な沿線人口があることが実感できた。
・食べ物や飲み物の売り子が、約3分おきに来る。中国新幹線の車内で腹が減る心配は、まずない。

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タイの不動産デベから返金を勝ち取る方法

こんばんは、Manachanです。今回のブログは、「タイ不動産」について情報共有いたします。

私はここ一週間、立て続けに、日本人の投資仲間から東南アジアの不動産トラブルの相談を受けました。国も見事に散らばってまして、

・6月5日、マレーシアの件で相談
・6月7日、タイの件で相談
・6月8日、フィリピンの件で相談

この3カ国に、カンボジアを加えた4カ国は、私が相談受ける件数でいえば不動のトップで、目下史上最強の「トラブル四天王」。それだけ大勢の日本人が不動産買ってて、そして、思い通りにいかない悩みも多いのでしょう。投資家コミュニティ「アジア太平洋大家の会」(APHOC)代表として、常に世界中に情報網を張り、トラブル対応力を高めていきたいものです。

 

このうちフィリピンに関しては、2015年10月に、「フィリピン物件の損切り法」というブログ記事を書き、同国のMaceda(マセダ)法、別名「不動産の割賦購入者保護法」に基づいて、購入をキャンセルして支払済金額の一部をデベロッパーから払い戻しを受ける方法についてお知らせしました。私の記事を読んで、フィリピン物件の損切りに成功(?)した方も、私が知るだけで5~6名います。

 

今回の日記は、「タイの不動産でトラブルがあった際に、デベロッパーから返金を受けられるかもしれない方法」について書きます。最初に結論からいうと、

タイの消費者保護センター(Consumer Protection Board)経由で陳情し、デベロッパーと調停の場を持ってもらう

これが私の知る限り、最も確度の高い方法のようです。これはタイ政府の役所で、バンコクの場合ドンムアン空港近くのチェンワッタナ通り沿い、イミグレーションと同じビルにあります。ホームページ(英語)はこちら

 

なお、この方法を使うには、いくつか前提条件があります。

・売買契約書(通常は英語)に定められた最終の期日を過ぎても物件引き渡しが行われない(あるいは、引き渡しされても登記できる状態になっていない)。

・上記は当然、デベロッパー側の違約になるので、購入者はこれまで支払った全額プラス利子の返却を受けたうえでキャンセルできる旨、契約書に明記されている。

・しかしデベロッパーがその責任を履行しようとしない。

 

その場合は、誰がみても、「契約書に書かれたことを守ろうとしない」デベロッパーの方が悪いですので、タイの「お上」として、何もしないわけにはいきません。タイの上場企業や、これから不動産事業を拡大しようとしている新興デベロッパーにとって、「消費者利益を蔑ろにする悪徳企業」としてお上に目をつけられたら今後の販売活動に支障を来たすので、その観点から相手が返金に応じる可能性は低くありません。

実際、この方法で返金を勝ち取った人が知り合いにいます。外国人だからといって臆することはありません。実際、サンシリのような超一流デべが日本での物件販売に乗り出すほど、日本人はタイ不動産業界にとって、大事なお客様になりつつあるので、タイ政府も日本人の評判はそれなりに気にするはずです。相手の不手際・不誠実で客として当然の利益が得られない場合は、この方法にチャレンジする価値は十分あると思います。

逆に、最も効果が出ない方法は、間に入ってる日本人業者に文句いったり、日本での裁判に訴えることでしょうね。彼らをつついても大抵何も出てこないし、詐欺で立件しようにも、自己責任が原則の不動産投資において、詐欺を立証するのは至難の業。万が一民事で勝訴しても、お金が返ってくる保証はありません。そもそもタイにある物件なんですから、「タイ国内で、タイ企業を相手に、タイの政府機関を通じて抗議する」のが王道でしょうね。

 

もし、タイ不動産のトラブルで困っていて、上記の返金方法についてご相談したい方は、我々APHOC事務局までご連絡いただければと思います。

 

こちらもご参考までに…

フィリピン物件の損切り法

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サラリーマンが海外の築古不動産で節税すべきか?-後編

前編の続きです。

アメリカ・テキサス州某所にある、「快速減価償却で節税できる中古物件」と「新築優良物件」の二つの紹介を受けたサラリーマンAさん、販売業者の説明を受けた当初は、「安く買えて節税もできる中古物件で決まりだぜ♪」だと思っていましたが、アメリカ不動産歴10数年、投資で成功したMさんのセカンドオピニオンを得たところ、「新築を選ぶべき」だという・・・その判断軸は何か?

 

「この2物件を比べると、競争力が全然違うのですよ。」

「競争力の高い物件は、毎年、家賃も伸びるし、さらに、5~6年後に売却された時の価格の伸びが全然違います。日本の減価償却で得られる節税効果よりも、ずっと大きなお金を、アメリカで稼いでくれるはずです。」

 

Mさんは続けます。

・この新築物件が建つ所は、市内でも指折りに治安が良く、優良な学校が多数あります。しかも大企業の本社進出が相次ぎ、全米、全世界から来たエグゼクティブやマネジャークラスの方々が選んで住まう場所になります。高属性な方々を入居ターゲットにできるので、良い家賃が取れますし、いま新築でコンディションが良ければ、数年後売却する時に、彼らに高値で売ることも十分視野に入ってきます。

・一方で、築古物件が建つ場所は、市内で最悪とはいいませんが、場所柄や治安はそれなりで、これといった特徴のない住宅地です。入居ターゲットは白人の労働者階級か、ヒスパニック系の子沢山ファミリーが中心で、3ベッドルームと庭とガレージがあれば家賃はそれなりにとれますが、伸びしろがありません。また、数年後売却する時に、ターゲットが労働者ファミリー中心になるので、キャピタルゲインもあまり取れません

 

その説明を聞いて、Aさんは考えました…

 

・新築の方が競争力の高い、良い物件だということは良く分かった。

・でも、築古を買わないと快速償却を使った節税はできない。

・新築を買って得られる期待収益と、築古を買って得られる節税メリットは、どちらが大きいんだろう?

 

そもそも、減価償却による節税とは具体的には何なのでしょう?Aさんのケースに即して考えてみましょう。数字や税務用語がガッツリ出てきますがお付き合いください(簡単のために、1ドル=100円で換算します)。

 

・新築を買う場合、木造の建物なので日本の税法による法定償却年数は22年。建物価値は1540万円。つまり年間70万円(=1540万円/22年)ずつ償却できる。

・一方、築古を買う場合、築22年以上経年した木造の建物なので、日本の税法上、4年で償却できる。建物価値は1200万円。つまり年間300万円(=1200万円/4年)も償却できる。

・その4年間、Aさんが年収1000万円超のサラリーマンであり続けた場合、所得税23%に地方税10%、計33%の税金が天引きされる。つまり、年収が100万円上がるごとに33万円づつ税金で持っていかれる計算になる。しかし上記の築古物件を購入した場合、今後4年にわたり、300万円×33%=99万円づつ、税金還付が受けられる。4年間通算だと396万円も節税できる。

・もっとも、その築古を売却した場合は、譲渡所得税が分離課税される。購入後5年を超えれば税率は20%(厳密にいえば20.315%)、売却価格が購入時と変わらないと仮定して、これまで償却した1200万円がそのまま簿価上の売却益になるので、(購入時・売却時諸費用を除いて計算すると)それに20%をかけた、1200×20%=240万円を納税することになる。ただし、これまで通算396万円節税できているので、売却時に240万円納税しても、税金面では156万円トクしたことになる。

・一方で、新築を買った場合、毎年の節税効果は70万円×33%=23.1万円。5年間通算の節税効果は115.5万円。その後に売却した場合の譲渡所得税は、上記に準じて計算した場合、償却済額350万円×20%=70万円。つまり税金面では45万円しかトクしない。

 

めんどくさい計算の、ぶっちゃけ結論を言うと、

・築古を買うと、今後5年間で、156万円も節税できる。

・新築を買うと、今後5年間で、45万円しか節税できない。

 

AさんはMさんに問います。「築古を買った方が、税金面では111万円もトクする計算になります。新築を買えば、それを上回るだけの収益が出るんですか?」

Mさん「そんなの楽勝ですよ…私に言わせれば、そんな小さな税金面のメリットを得るために、わざわざ競争力の劣る物件を買う意味が分かりません。

 

なぜ、物件の収益力にそこまで差が出るのか?それは、「業者の説明になかった部分」に秘密があります。

アメリカは、不動産投資関連のデータベースが発達しています。それを調べると、新築物件の建つエリアの不動産価値の伸び率は、直近で年率8~10%、市の平均が4%、築古物件のエリアでは2~3%という数字が出ていました。

 

両者の差を控え目にみて、今後5年間通算で、

 

・新築物件は、「年率5%づつ物件価値が上昇」、「年率3%づつ賃料が上昇する」と仮定

・中古物件は、「年率2%づつ物件価値が上昇」、「賃料上昇は年率0%」と仮定

 

購入5年後(6年目)に売却する前提でシミュレーションすると、歴然とした差が出ました。簡単のために購入時・保有時・売却時の費用を除いて考えると、

 

・新築物件は、「通算の家賃収入956万円」+「値上がり益608万円」=1564万円を産む。

・築古物件は、「通算の家賃収入720万円」+「値上がり益167万円」=887万円を産む。

・両者の差は、677万円。

 

Mさんは言います。「今の局面で築古物件を選ぶということは、シミュレーション上の話ではありますが、ざっくり言うと、111万円トクするために、677万円を余分に産む投資機会をみすみす逃すということなんですよ。」

Aさんは、ここでようやく理解できました。目先の節税よりも、本当に利益を生む優良不動産に投資すべきだというセオリーを・・・

数年後、Aさんはアメリカ・テキサスの地を訪れ、優良な地域で新築を買った選択が正しかったことを実感しました。街がどんどんきれいになり、魅力的な商業施設が次々とできる、家賃は毎年上がり、足元の値上がり幅は年5%どころかそれ以上のパフォーマンスを上げ続けていました。「銘菓東京バナナ」をもってMさんの邸宅を訪れ、何百万円を増やしてくれた彼のアドバイスに改めて感謝したのは言うまでもありません。

 

補足)上の収支計算は厳密にいうと正しくありません。新築物件は大きく値上がるので、その分、日本で納税する譲渡所得税も増えますし、また購入価格が違いますので(新築2200万に対し築古1600万)、それを基準に投資効率を比較しなければなりません。その他、購入時経費4%、売却時経費6%、保有時経費が初年度月額4万円、経費上昇率2%/年と、現実的な想定を置いてNETベーでス計算し、IRR(内部収益率)で公平に比較したところ、結果は

 

アメリカの収益のみで計算した場合

⇒新築のIRR  11.02%/年
⇒築古のIRR 6.97%/年

 

日本の節税効果も入れて計算した場合

⇒新築のIRR  10.33%/年
⇒築古のIRR 8.50%/年

 

結局、年収1000万円前後の、資産形成期のサラリーマンの場合、「快速償却で節税する位なら、優良物件を買うことにフォーカスした方が吉」ということが、数字的にも裏付けられたと思います。

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サラリーマンが海外の築古不動産で節税すべきか?-前編

こんにちはManachanです。アメリカ、パナマ、カナダと、北中米3ヶ国を回る7泊8日の出張から日本に帰るところです。

今回のメルマガで、いま業界で話題になっている、「海外の築古不動産を買って減価償却で節税する」不動産投資のあり方について、私の思うところを書きますね。

日本でも世界中どこでも、人が住み経済を営む場所である限り不動産の基本は変わりません。「不動産=移動できない土地建物」ゆえ極めてローカルな存在であり、地元の人間が貸し借り、売買を繰り返すなかで「相場」が形成されていきます。

都市中心地や名門学校に近いとか、富裕層が好む地域の物件は競争力が強く、地域の平均より高値で取引されます。そうでないフツーの物件はそれなりの評価になり、競争力の弱い物件は需給バランスによっては値下がりもします、でも需要がある限り価値ゼロになることはありません。

ところで、不動産は極めて「ローカル」なモノなのに、日本に住んで海外不動産投資という「超遠隔操作」をしようとする…そこに根本的な難しさがあると思います。

海外で購入する不動産が「地元民に選ばれる物件」であれば安心感あるし、投資の成功確率も高まりますが、土地勘もなく法制度も住まい方も違う海外で、それをどうやって見極めるか?早い話が、東京に住んで札幌市の不動産に遠隔投資するのと、米国テネシー州ナッシュビル市の不動産に遠隔投資するのとで、個別物件力の見極めの難易度が高いのはどちらか?答えは自明ですよね。

業者に良いと勧められて買った海外の物件が、実は地域のなかで競争力の弱い物件だった、入居者属性が悪くて問題続出の物件だった、或いは地域の相場より明らかに割高な価格で買ったので損切りしないと売れない…みたいなことが起こらないよう、一投資家として海外不動産リテラシーと物件見極め力を常に磨きたいと思います。ちなみに私の投資スタンスは二つ。

– 地元において競争力の高い「安心物件」を、「適正な価格」で買う。

あるいは、

– 地元において競争力が高いとはいえない「それなりの物件」を、「相場より安く」買う。

そろそろ本題に移りましょう。いま日本では、「快速償却で節税できる海外の木造築古物件」がたくさん売られています。その主戦場はアメリカ…「木造築古物件が豊富」「物件価格に占める建物対価が高い」「築が古くても値下がらない物件が多い」三拍子揃った米国は、節税用物件をつくりやすいのです。

海外不動産で節税できる仕組みは日経の記事に詳しい説明があります。もっとも、この節税方式は国税から厳しい目で見られており、近い将来何らかのメスが入る可能性があります(参考記事:健美家コラム)。

節税用海外不動産の販売を、私は否定しません。毎年、所得税や住民税を死ぬほど払って、少しでも節約したい富裕層やスーパー高給サラリーマンとってはメリットある話だと思います。感覚的にいうと、額面年収3000万円以上、所得税住民税合わせた限界税率が50%や55%いくような人にとっては利用価値が大きいでしょう(今後、税制や運用が変わって節税できなくなるリスクはありますけど…)。

もっとも、額面年収1000万円前後のアッパーミドルなサラリーマン投資家にオススメできるようなものではないと思います。そういう方は一般論として(私自身も含めて)、償却は取れるけれど競争力に疑問符のつく中古物件を買うより、素直に良い立地で競争力の高い物件を買う方がメリット大きいと思います。なぜなら、

– (今後数年間、海外不動産償却節税スキームを使い続けられると仮定して)日本における節税効果よりも、海外の優良物件が低リスクで運用でき、自然に値上がり、賃料も伸びるメリットの方が大きいと思うからです。

「年収1000万サラリーマンの海外不動産投資は、築古の償却物件よりも好立地で競争力ある新築や築浅の方が良い」という仮説を、現実的な想定を置いてシミュレーション·実証してみました。

【Case Study】
東京都内の外資系企業に勤めるサラリーマンAさん(42歳)は額面年収が1050万円、基礎控除や扶養控除を除いた後の所得は700万円、所得税の税率が23%、地方税が10%で、「1万円所得が増えたら3300円を税金で持っていかれる」状況を何とかしたいと思っていたところに、「海外の中古不動産で節税できる」話をネットで見つけ、善は急げと、早速セミナーに行きました。そこで紹介されたのが「米国テキサス州某市」の物件。Aさんはその場所には土地勘ありませんが海外駐在経験があり英語も堪能、外国アレルギーもないので早速検討をはじめました。

ちなみに、紹介されたのは同じ都市内にある「エリアはそれなりだけど償却で節税できる木造築古戸建」と、「エリアが良い新築戸建」でした。

[築古戸建-業者から説明を受けた情報]
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木造 1950年築、内装リフォーム済
販売価格 16万ドル
– うち土地 4万ドル(25%)
– うち建物 12万ドル (75%)
想定家賃 1200ドル/月
諸経費、諸税 400ドル/月
NET家賃収入 800ドル/月
グロス利回り 9.0%
NET利回り 6.0%
5年間保有した時の節税効果 1200万 x 33% = 396万円
6年目に売却した時の長期譲渡税 1200万 X 20% =240万円
節税効果 396万-240万=156万円
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[新築戸建-業者から説明を受けた情報]
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木造 2017年築、10年間性能保証付き
販売価格 22万ドル
– うち土地 6.6万ドル(30%)
– うち建物 15.4万ドル (70%)
想定家賃 1500ドル/月
諸経費、諸税 400ドル/月
NET家賃収入 1100ドル/月
グロス利回り 8.2%
NET利回り 6.0%
5年間保有した時の節税効果 350万 x 33% = 115万円
6年目に売却した時の長期譲渡税 350万 X 20% =70万円
節税効果 115万-70万=45万円
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この説明を聞いて、Aさんは次のように考えました。

– どちらもネット利回りは同じ(6%)
– 築古戸建の方が安く買える(16万ドルvs22万ドル)
– 築古戸建の方が税金でトクをする(156万円vs45万円)

「こりゃ、どうみても築古戸建で決まりじゃん!」と思った彼は、セミナー後に配られたアンケート用紙に「築古戸建の購入を前提に個別面談希望」と書いて、意気揚々と家に帰りました。

翌日、少し冷静になったAさん、「2000万円もする高額なものを買うんだから、業者以外に投資経験者の意見も聞いた方が良い」と考えました。得意のネット検索でアメリカ不動産投資で成功している投資家Mさんを探しあて、彼のセカンドオピニオンを得るべく、メールしました。

数日後、Mさんは、一通り調査したあと、このように答えました。

「Aさん、私の見立てでは、新築を選ぶべきです」

「築古を買ったら、日本の税金は多少得するかもしれませんが、新築はそれ以上のお金を、アメリカで稼いでくれるでしょう。しかも築古より明らかにリスク低いです」

「なぜ差が出るのか?その理由は、業者のさんが説明しないところにあります」

後編につづく…

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