今回のブログ記事は、日本の銀行関係者、または融資関係で銀行とお付き合いのある経営者・投資家の方々に向けて書いた、一事業者からの問題提起です。
私は、東京の品川区でささやかな不動産仲介業を営む者です。もともと外資系IT企業に勤めるエンジニアで、趣味で不動産投資を嗜んできましたが、2013年2月、勤め先を解雇されたことをきっかけに、大好きな不動産で生計を立てる決意をして第二の人生をスタート。オフィスを借り宅建業免許を取り、一人社長で頑張ってきました。
創業5年目の2017年末、ご縁あって、石川県金沢市、ひがし茶屋街近くにある町家を弊社で買わせていただきました。金沢の文豪・徳田秋声の名作「町の踊り場」にも出てくる、明治35年から116年の長きにわたり、金沢の街を見守り続けてきた歴史ある家です。秋声の姉の婚家(葉茶屋)であった大正~昭和初期から所有者が何度か変わり、今回、オーナーの和菓子屋ご夫婦が高齢で引退に伴い売却することになりました。事情でキャンセルが続いてしまいタイムリミット(年末)が迫るなか、金沢の業者仲間経由で私に話が来ました。
この住宅は、もし私が買わなければ、おそらく取り壊されてコインパーキングになっていただろうという話。もしそうなったら秋声作品ゆかりの建物がこの世から消えてしまいます。私は是非後世に残したいと考え、手元の現金を使ってまず土地建物を購入。翌年から建物本来の良さを残した町家を再生した宿泊施設として設計を開始、旅館業許可つきの建築確認を取り、現地の一棟民泊専門の業者に運営をお願いする想定で、つい先日(2018年10月初め)、工事着工したところです。
よそ者である私が、金沢の街で宿泊施設のオーナーになるにあたって、まず地元町会の方々の気持ちを理解尊重する必要がありますし、同時に私の事業が金沢の和風な街並みを守り文化を継承する趣旨であることを、地元にご理解いただく必要があります。そこで現地の友人の手ほどきを受けつつ、何度も金沢に足を運び、ご挨拶を重ねてきました。
事業資金については、すでに支出した土地建物や取得費用、税金、火災保険、設計費等については自費で賄った上で、工事資金に関しては一部で良いので、できれば金融機関にご支援いただこうと思い、金沢および東京の金融機関数行にご相談しましたが、今のところ、ゼロ回答が続いています。
各銀行や支店にそれぞれの融資・審査基準があり、結果的にご縁がなくてゼロ回答になることは仕方ないですし、また銀行からみて弊社のような中小零細企業への融資は手間がかかる割に大して旨味がないのかもしれません。
ですが審査や回答の中身が、(こんな言い方して申し訳ないですが…)私たち民間事業者からみて余りにも「思考停止」ふうに見えたのが余りにも残念で、一言申し上げたい一念から、筆をとらせていただきました。
【ゼロ回答の例】
1)石川県に本店がある地銀より「石川県内にお住まいや事業所のない方にはご融資できません」
→これを石川県にしか拠点がない銀行から言われるなら理解できますが、私が相談した銀行は東京に支店があり、かつ私自身が東京支店に出向いて融資相談に行った結果、これを言われました(注.東京支店から私の事務所まで電車で15分の距離です)。
2)東京都に本店があるメガバンクより「築年数が耐用年数を超えており担保が取れないので無理です」、「弊社として一棟物件の運営事業には当面融資できません」
→相談したタイミングが、スルガ銀行に対する金融庁の検査が入っている時でしたから、稟議が厳しいのは理解しますが、ここは「平時」でも耐用年数超え物件に融資出さないことで知られる銀行で、私ども不動産業者からみて、かなりビジネスチャンスを逸しているように見えます。
銀行とは本来、資金需要のある民間企業にお金を貸して、事業のリスクの一部を負うことで利益を出す業態であるはず。実際に融資を通じて日本の経済成長を支えてきたわけだし、それが銀行員のプライドや信頼感の源泉になってきたはずです。
しかし今や、時代が変わり、銀行業務も激変。原点を忘れた銀行経営陣や行員が増えた(ように見える)結果、一部の民間事業者に、今やこんな風に揶揄されていますよ。
・融資を必要とする俺ら中小企業に全然貸さないし、貸すノウハウもない。
・逆に、株式市場や社債でいくらでも資金調達できる大企業にばかり貸したがる。必要ない人に貸すから金利値切られるし、儲からない。
・本業(融資)で稼げないからといって、本来は証券会社や保険会社がやるはずの手数料稼ぎに走っている。それでも行員食わせるの大変だから次は不動産仲介までやらせてもらうらしい。
・俺ら(事業者)ばかりがリスクを負って、銀行がリスク負わずに手数料稼ぎに走る、そんな国が経済成長できるのか?
・お前らもっと頭使ってガチで仕事しろよ!働くって「はた(傍)をラク(楽)にする」ことだろう?民間企業の資金繰りを楽にしてくれない銀行の存在意義って一体何なの?
もし「それは違う!」というのなら、具体的な行動で示していただきたい。「私が上を説得して、500万円でも出してみせます!」…この文章がきっかけで、行員が意気に感じるかもしれない。或いは、この文章を読んだ方が、私を気概のある行員と引き合わせてくれるかもしれない。そんな一縷の望みを託しつつこの文章を書きました。
出でよ、金融マン!日本の銀行、このままでいいのか?リスクを負ってビジネスと雇用をつくり出すこの国の民間事業者から「使えねえ」扱いされていて良いのか?「否!」というなら、すぐに行動で示して欲しい。そんな人間が現れてくる日本であるなら、まだ将来の望みは残っていると信じたい。