こんにちは。Manachan@名古屋へ移動中です。
GW前後の日本で、物議を醸している、ビッグコミック・スピリッツ(小学館)に連載中の「美味しんぼ~福島の真実編」もとい、「デマりんぼ~福島差別編」。5/12発売号で、またやっちゃいましたね。
もはや、内容がグルメでもなんでもない。単なる「鼻血炎上マンガ」じゃん。
【大阪まで敵にまわした美味しんぼ】
これまでの主な経緯は、「美味しんぼ問題の時系列的整理」をご参照ください。
5/12発売のスピリッツ24号では、震災瓦礫処理と放射線被曝との関連づけ描写で、福島だけでなく、大阪や岩手まで敵にまわし、内閣官房長官や国家省庁からも抗議のコメントを受けまくって、国を巻き込んでの大炎上。まさに四面楚歌。
福島県双葉町が公式に抗議声明 (5/7)
菅官房長官が批判「鼻血と被ばく因果関係ない」(5/12)
消費者庁「正確な情報で判断を」冷静な対応求める (5/12)
文科相 美味しんぼ描写「福島県民に迷惑」と批判 (5/12)
岩手県「漫画『美味しんぼ』での大阪における災害廃棄物の処理に関する記述について」
橋下大阪市長 「美味しんぼファンだが残念」 (5/12)
「環境省 放射性物質対策に関する不安の声について」 (5/13)
すでに、福島の観光業に経済的実害も出ているようです。まじで裁判沙汰になるかも。
福島県・飯坂温泉で「美味しんぼ」の影響と思われる団体客宿泊キャンセルの実害 (5/13)
5/19日発売の最終号で、スピリッツは読者からの声や、有識者の声をまとめて掲載するみたいだけど、世間はそれだけじゃ許さないだろうね。
少なくとも、小学館、スピリッツ編集部は、「事実と反する」と言われた次の指摘事項に、回答しなければならないでしょう。
・双葉町…双葉町内で鼻血が多発しているという事実は「ない」と言っている
・大阪市…がれき焼却の現場で体調不良が多発しているという事実は「ない」と言っている。
・岩手県…がれき焼却前後の各段階で、放射線量が変化した事実は「ない」と言っている。
あとは、「福島での放射線被曝と鼻血との関連性は考えられない」とする、環境省や官房長官の指摘に対して、会社としての見解を示さなくてはならないでしょう。
小学館サイドが、上記に反駁するに足る客観的事実を示すことができない限り、公に「デマ認定」される。デマを広めて、福島の心を傷つけて、炎上商法で部数を伸ばそうした出版社という、ブラックイメージがついてしまう。
ですが、小学館が反論するに十分なデータをとっているのかというと、そうではないらしい。福島県のホームページによれば、小学館からの取材内容は次の通りだったという
(出版社から取材依頼のあった事項)
・「美味しんぼ」に掲載したものと同様の症状を訴えられる方を、他に知っているか。
・鼻血や疲労感の症状に、放射線被曝(※依頼原文では「被爆」)の影響が、要因として考えられるかどうか。
・「美味しんぼ」の内容についての意見
なんて頭悪い!鼻血なんて、誰だって出るじゃん。しかも、「被曝」と「被爆」の区別もついてないのか…こんなレベルの理解度と取材で、説得力ある事実を示せるわけがないだろう?
「表現の自由」だか何だか知らないけど、よくもまあ、日本を代表する大出版社が、科学的根拠のないデマを堂々と流すものだ。いわゆる炎上商法でしょうけど、5/19以降、その代償を、がっつり払うことになるのでしょうね。
ところで、今思えば、もし3年前に、この「鼻血マンガ」が出ていたら、世の中の反応は、今とはずいぶん違ったものになってたでしょうね。
大震災のショックがさめやらぬ、2011年の6~7月、9~11月あたりは、福島県はもちろん、関東においても、放射能恐怖がピークに達しており、ネット上でもリアルでも「デマ、風説」の最盛期でした。
当時は、「武田邦彦」(中部大教授)とか、「早川由紀夫」(群馬大教授)あたりが英雄視されてましたね(今では「デマ四天王」認定されて影響力ほぼゼロ…)。商業週刊誌の「放射能恐怖煽り」も、現在の比ではありませんでした。
私は、零細ながら日々ブログで情報発信する身。この放射能騒ぎ、実に愚かなものだと感じていました。
自分は化学工学の研究室にいたこともあります。セシウム134/137みたいな放射性物質は、地球上にある物質のなかで、おそらく一番定量的に測りやすいもので、その健康影響も、他の複雑な化合物(例えばダイオキシン)よりずっと研究・分析しやすいはずと考えていました。Webで少し調べただけで、この方面で膨大な科学的知見が蓄積されていることが分かりました。
数値で整理してみると、福島県で実際に人が住んでいるエリアでの線量なんて、健康影響を気にするレベルではない(リスクゼロとは言い切れないけど、他のリスクに隠れて見えなくなる程度)。ましてや関東の放射線量なんて、「こんな微々たるもの、どうして気になるの?」と思っていたけど、
・愛知県日進市での花火大会で、福島県産花火の打ち上げ中止(2011/9/18)
・京都の五山送り火で、岩手県陸前
高田市産の松の使用中止(2011/8/7)
そんなニュースが日々飛び交う、SF小説ばりのシュールな日々。
だいいち、文京区の小学生が放射線を気にして柏市での課外授業を中止した位(同じ首都圏、だいたい30㎞も離れてないじゃん?)。異常な雰囲気のなかで、放射能ネタを書くのに、ものすごく気を使いました。
当時は今と違って、「放射能気にしない」という私の方が少数派でしたから…もちろん炎上リスクもあるし(抗議のメール、コメントがっつり来ましたよ)、私の生まれ故郷である柏市や東葛地方の放射線量について「安全」の文脈で書いても、「危険」の文脈でTwitter拡散され、愛する地元に風評被害を招くリスクも感じていました。
例えば、私は飛行機に頻繁に乗ります。機内で手持ちのガイガーで測ったら平気で2μSrv/h超えます。一方、柏周辺を測り回っても、2011年後半当時でさえ0.4μSrv/hを超えるところはわずか(今は0.1前後で平常値)…ブログでそんな書き方をしても、Twitterで「柏は0.4μSrv/hもある、超危険」みたいに拡散されて、数十万のフォロワーがいる人がリツイートしまくる。そんな伝わり方は本意ではないですが、でも私のコントロールが及ぶわけでもありません。
だから、最初に書いたエッセイでは、「具体的な地名を出すのを遠慮した」ほどです。
放射線~当事者と傍観者の違い(2011/6/20)
次のエッセイでは、勇気を出して、「柏」「東葛」という地名を出しました。何も後ろめたいことしてないのに、自分のやってることが、まるで地下結社みたいに思えたものです。
放射能衆愚の国(2011/6/23)
原子力村 vs 反原発村~東葛より怒りをこめて(2011/8/16)
そういう時代を経てきたことを考えると、震災後3年経った今、自治体や国家政府のリーダーたちが、「正確でないことを広めるのはおかしい」と、ハッキリ言ってくれるのは頼もしい。私たちの社会も、それだけ落ち着いて、正気を戻してきたのでしょうね。
最後に、「デマりんぼ」に対して、言いたいこと
「お前ら、3年遅いんだよ!」
「3年前なら官軍、今だと賊軍」
交通事故のアナロジーでいうと、確かに事故の加害者は東電。でも、交通事故で痛がっている福島県民の傷口に塩を塗ったのが、小学館と雁屋哲…ぶん殴られるの当たり前だし、その位は覚悟しなくちゃならない。
戦う覚悟があるなら、専門家使って徹底的に調べろよ!それさえできずに「デマ&炎上商法」なんて、情けないぜ。
あと、いい歳した大人が、「デマ」を「真実」と強弁するなんて、漫画以前に単なるバカ丸出しだぜ。
あと、もう一つ言うと、
震災起こった2011年の時点で、私たちの政府がリーダーシップをとって、上のようなことを言ってくれたらよかったのになあ…
でも、時の政権・民主党の能力じゃ無理なのかも…
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