海外不動産にタックスヘブンは似合わない

おはようございます、Manachanです。

前回のブログ(海外節税物件とモルヒネ依存症)では、日本の税法上の「快速減価償却」を使って節税できる海外不動産の実例をあげました。確かに少しは節税できるのかもしれませんが、バランスシートやキャッシュフローなど、投資全体のバランスを考えると余り推奨できないというのが私の考えです。つまり、

「個人レベルで、いろんなテクニックを駆使しても、現実的に節税できるのはほんの数%~10%」
「その分を、業者が価格に上乗せしていたら、節税メリットが吹き飛んでしまう」
「購入後数年間のキャッシュフローをみると、節税利益を先食いする分、その後がつらくなる」
「国税を大量に還付するので、税務調査に入られるリスクが大きい」

→結論:そんな不自然なことやる位なら、素直に、収益の上がる良い物件買って、堂々と納税した方がマシじゃん!

 

ところで、日本の税法ではなく、さらに税率の安い外国の税率を使って、不動産取得と節税を組み合わせようぜ、という考えもあります。最近めっきり少なくなりましたが、数年前は、

「香港、シンガポール、オーストラリアなど、相続税の無い国で不動産買って、ついでに家族で移住しようぜ」という、タックスヘブン業者のセールストークが盛んに行われた時期がありました。当時は、

・被相続人と相続人が共に、5年以上、海外居住を続ければ、(日本の税法上)非居住者ステータスが得られる。
・非居住者なので、日本の相続税や贈与税を払う必要ははい。
・しかも、居住国の法制上、無税で相続・贈与が認められる。

 

しかし、平成29年の税改正によって、相続関係者の海外居住期間の要件が5年から10年に延長され(リンク)、上記のスキームは一気に敷居が高くなりました。私の交友範囲でも、2011~12年頃にシンガポール等に移住した方々が、いま続々と日本に帰国しています。皆、異口同音に、「相続税タダにならなかった、資産管理法人つくったけど無駄だった、シンガポールの物価高が耐えがたかった」等々…

はたからみて、「この5年間、節税なんて考えず、日本で真面目にビジネスに取り組んだ方が、結局ずっとお金になっただろうな」…と思われる方々ばかりです。

 

「海外に資産を持ち、日本より安い税率で効率よく回し、可能なら相続税も回避したい」というのが、多くの投資家にとって理想なんだと思いますが、残念ながら、海外の安い税率を使って投資するのはますます難しい時代になってきています。

結論から先にいうと、日本に住み、日本国籍である限り、多少の調整はあっても結局は日本の税率で課税される…それを前提に海外投資プランを考えるしかありません。

 

その背景には、来年から日本を含むOECD諸国で実施されるCRS(Common Reporting Standard、共通報告基準)があります(リンク)。これ、ものすごく単純化して言うと、「世界共通マイナンバー」のようなもので、国をまたぐ資金の流れや、国籍所在国以外でつくった口座情報が、各国の税務当局間で共有されます。日本人の場合は、香港→カンボジアなど、外国間でお金を動かしたところで、結局、日本の国税にレポートされる可能性があるわけです。

各国税務当局によって、税金回避の道がどんどん塞がれている以上、どの国の国民であっても基本的には同じ構図です。たとえばオーストラリア国民がアメリカや日本に不動産を買って、オーストラリア以外でお金を動かしても、本国の税務当局に通報される点では日本人と全く同じわけで、結局世界中どこに居ても、税金からは逃れられない時代になりつつあります。

 

少し視点を変えて書きますね。日本人が海外不動産を購入する場合、課税の根拠になる要素は、3つあります。

1)どの国の国籍であるのか?
2)現住所はどこか?
3)不動産はどの国にあるか?

 

1)と3)については、動かせません。ですので、節税できる余地があるとすれば、2)だけです。たとえば、

A)「現住所を税率の安い国に置く」
B)「どの国の居住者にもならない」(PT=Perpetual Traveler)
C)「資産管理法人を税率の安い国(タックスヘブン)に置いて各国の不動産を保有させる」等々…

 

上記のうち、一番敷居の低いのはC)ですが、これがCRS発動によって、税務的には意味のないものとなります。残るはA)とB)ですが、私からみて、どの選択肢も魅力的に感じません。

A)→相続税のない国に不動産買って移住しても、家族揃って10年以上居住しなくては非居住者扱いにならない。
B)→家族持ちには非現実的だし、PTだとビジネス上も信用されないリスク大。

 

なお、「日本国籍を放棄して外国の国民になる」なら話は別ですが、あえてやる意味を感じません。日本は住みやすいし、日本パスポートは使い勝手よくて便利。それに、家族や親兄弟が皆日本にいるのに、日本入国のたびに外国人の列に並んで在留カードをチェックされる情景は、ギャグ以外の何者でもない。

それに何より、自らが日本人を捨てて外国人になる選択をしたところで、結局、その国に税金を納めることになるのです。だったら、俺は日本人のままでいいや。

結論、グローバル視点での節税回避は、トヨタ自動車みたいなグローバルビジネスならともかく、個人投資家レベルは現実的ではないと思います。それよりも、ちゃんと収益のあがる海外物件を選んで買い、資産を増やし、日本国の一員として日本の税金を払っていくスタンスでいくしかないのだと思います。

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