ドイツと日本の労働時間・生産性の話

こんにちはManachanです。ドイツ・デュッセルドルフ近郊での2日間の不動産買付ツアーアテンドの仕事が終わりました。

この仕事、特にツアー2日目は朝から晩まで、物件説明に加えて公証役場での委任状作成、銀行の口座サポート、会議通訳…昼メシ食う暇もない位忙しい。でも素晴らしい仕事ですね。ドイツで苦楽(?)を共にしたツアー参加者は皆仲良くなって、この機会に「一生の友」ができたりします。「大人の修学旅行みたい」で、純粋に楽しいです。

次回ドイツ不動産ツアーは4月上旬に企画します。数日後にアナウンスしますので、楽しみにしていてくださいね。

 

ここ3か月余りで3回もドイツに来てしまった私。いつも思うのは、

・意外に物価が安く、売ってるものの品質も良い。

・鉄道網が充実し、たいてい時間通りに来るし、無料の高速道路(アウトバーン)が網の目のように張り巡らされていて、移動コストが安くあがる。

 

ドイツ人の給与水準はヨーロッパのなかで中上位にあり、平均すると日本より少し高い位。それだけまともな収入がある国民が、この安い物価と利便性のなかで暮らせるドイツは、かなり生活水準が高いのではないかと。

その目安として、「一人当たりの購買力平価GDP」(物価水準を考慮した所得水準)がありますが、ドイツは約47,000USドルで世界20位前後、オーストラリアやスウェーデンと近い水準。同ランキング30位前後の日本(約38,000USドル)より常に高い水準を維持し、近年その差は開く傾向。

 

欧州三大国と呼ばれる、ドイツ、フランス、イギリスと比べてみても、ほぼ同じ傾向がみられます。常にドイツが一歩抜きん出て、差も広がっています。

 

しかも特筆すべきは、ドイツはこの高い生活水準を、世界最短の労働時間で実現していることです。ドイツ人の労働時間は年間1300時間台で、OECD30数か国のなかで、オランダと並んで一番短い部類に入ります。一方、日本の数字はOECD平均に近い1700時間台になります。

 

確かに、ドイツで不動産視察してても、クルマの通勤ラッシュが朝8~9時頃だし、帰宅ラッシュが夕方4~5時頃なので、残業しない人が大部分なんだろうなと思います。南欧方面に長期間バカンスに出かける方も多いし…

なぜ、ドイツは高い労働生産性を実現できて、日本にできないのか?その事実を指摘するだけでなく、自分の体験を踏まえて考察してみます。私思うに、

 

・ドイツでは、人々が長時間働かず定時に帰ることが、社会的、制度的に合意されている。

・そのことにより生じる不便や不都合も、社会が容認している。

 

今のドイツを見ていると、私が移住した西暦2000年頃のオーストラリア・シドニーを思い出します。当時のシドニーは、

・ショッピングセンターは通常、18時に閉店。

・しかも、職員が17時45分頃に帰り支度を始める。

・17時50分過ぎに買い物しようとしたら、レジのお姉さんに睨まれる!

 

買い物客の利便よりも、職員が定時に帰れることが優先されてたんですね。そうした方が誰もが得する制度になっていたのです。

・会社は、職員を残業させたら、制度上、割高な残業代を払わなきゃならない。

・会社はその出費を避けるため、残業代を払うよりも職員に午後出社を認めるか代休を与えることを選択する。

・職員の立場からすると、どっちみち残業代もらえないので、夜遅くまで残って残業代を稼ごうとする者は皆無。

 

当時私は、シドニーでサラリーマンしてましたが、毎日定時に帰れるのでラクでしたよ。残業しても最大1時間位だったかな。一方、顧客・生活者の立場でいうと、暮らしていて不便でした。お店が空いてる時間にダッシュで買い物しなくちゃならない、皆同じこと考えるから、渋滞にはまって結局間に合わなかったりする…

サービスも悪かったですね。システムがダウンするとモノ買えない、サービス受けられない、担当者が長期休暇だったりすると物事が進まない…それが日常茶飯事。

首都圏の便利な街(柏駅前)で生まれ育った私。自宅から500m以内にデパートあり商店街あり、スーパーありコンビニ沢山、何百何千のバラエティ豊かな個店あり。人生に必要なものは何でも、24時間いつでも買える。盆暮れ正月関係ない。サービスは素晴らしく良く、客のわがままに誠実に答えてくれる。

だから私、シドニーに移住したての頃は、「こんなクソ不便な、クソ田舎に住めるか!」と、悪態をついていたものです。でも1年も住めば、「だいたい、こんなもんさ~」と慣れてきて、逆に誰の気兼ねもなく、自由時間がたっぷりとれるオーストラリア暮らしの良さが分かってきました。

 

あれから15年。シドニーは大きく変わりました。一言でいうと、「日本みたいに便利な、眠らない街」にグッと近づいた。今では24時間営業のショッピングセンターさえあるし、深夜営業の飲食店やコンビニも増えました。昼夜構わず働くアジア系住民が増えたからでしょうね。利便性を求める社会になれば当然、ワークカルチャーも変わりつつあります。

一方、今のドイツ・デュッセルドルフは、15年前の静かだったシドニーによく似ています。日曜日はお店ほとんど閉まり、交通量もほとんどない。平日の夜、20時以降に買い物できる場所はスーパー、ディスカウントストア位に限られる。コンビニほとんどない。早朝も深夜も頑張って営業するのはトルコ・アラブ系のケバブ店くらいかな。

生活する上で必要なものは揃い、ドイツなりの文脈で利便性もまあ高い。環境も街並みも良い。自由時間がたっぷりあって、散策とか日曜大工、ガーデニングなど思う存分楽しめそう。でも、アメ横みたいに賑やかで猥雑でエキサイティングな場所が好きな私には、少し物足りないな~と感じる。ま、個人の好みの問題ですけどね…

 

ま、そんなことも含めて考えると、ドイツの労働生産性が高いのは当たり前ですね。仕事は定時で終わる前提の社会、多少不便でサービス悪くても、お客からはしっかりお金をとる、それがGDP統計に反映される。

日本の労働生産性が低くでるのも、当然でしょう。こちらは顧客の都合や利便性を優先する前提の社会。労働者が「サービス」提供に使う時間が長く、そのコストをお客に転嫁できないことによる「ただ働き」も多い。日本企業社会の競争環境も多いに影響しているのでしょう。逆にいうと、日本人はGDP統計に表れない利便性やクオリティ高いサービスを享受しているとも言えます。

 

企業経済活動や働き方に関して、日本が改善すべき点、ドイツに学ぶべき点は多いと思います。が、これらは「社会」の下部概念であり、社会のニーズや価値観と表裏一体であることを、まず知らねばなりません。

日本がドイツみたいに定時で終われるような社会をつくれるかどうかは、日本の人々が今後何を目指すかによります。極めてサービスを重視する今の価値観が少し変わり、多少の不便や自助努力を日本社会が容認するのであれば、ドイツに近づくのかもしれません。

Share on Facebook

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*