最近、ユーロ圏危機、米国債危機、新興国バブル崩壊など・・・
世界経済には暗雲が立ちこめています。
その中で、消去法的に買われ、価値を上げている日本円に対しても、
手放しで喜べない方が多いことでしょう。
それもそのはず、せっかく海外に持った資産を、
円換算すると目減りしているわけですから・・・。
海外不動産投資の「人気国」でいうと、
●マレーシアリンギット
今年前半は、1リンギット=27円前後だったのが、今では24円台前半に。
●フィリピンペソ
今年前半は、1ペソ=1.9円前後だったのが、今では1.76円に。
これに加え、先進国通貨でも円高傾向は変わりません。
米ドル、ユーロ以外でも、たとえば、
●英ポンド
今年前半は、1ポンド=130円前後だったのが、今では118円台に。
●豪ドル&カナダドル
今年前半は、1ドル=83円位あったのが、今では74円台に。
そんななか、「アジア太平洋大家の会」事務局に寄せられる質問も、
世界経済や為替動向に関する内容が増えてきました。
そこで、為替に関する、基本的な見方・考え方について、
これから数回にわたり、私見を述べたいと思います。
一言断っておくと、私はこの分野の専門家でも何でもなく、
単なる、一介の不動産投資家に過ぎないので、
内容的には、「突っ込みどころ満載」だろうと思います。
その辺を考慮して、お読みくださいませ。
情報収集と、投資は自己責任で・・・
今回は通貨の分類と基本的な為替の動き方のご紹介です。
【1.好景気にはハイリスク通貨で決まり!】
世界には数多くの国と通貨が存在しますが、
その中には、「ハイリスク(リスク選好)通貨」と、
「ローリスク(リスク回避)通貨」があることは、
為替の動きをみる上で、基本だと思うので、
覚えておいて損はないと思います。
「ハイリスク通貨」を一言でいえば、
「世界経済の状況が良く、人々がリスクを取りたがる時期に、積極的に買われる通貨」
のことです。
具体的には、新興国通貨や、資源国通貨の多くがこれに該当し、
概して、金利が高い(目安として、公定金利が年3~4%以上)、
という特徴があります。
「ハイリスク」といっても、
その通貨を発行する国が危ない(リスク高い)とは限りません。
このグループの中には、豪ドルやNZドルのように、
安定した経済経営をしている先進国の通貨も含まれます。
では、
なぜそのような国の通貨がハイリスクと見なされるかというと、
金利(=資金調達コスト)が高いか、
或いは通貨の市場流通量が少なく、
変動幅(ボラティリティ)が大きいからです。
例えば豪州やNZは、歴史的に、
金利水準が高い水準で推移してきた国です。
いずれも人口が少なく、
自国での資本形成を待っていられなかったお国柄。
そこで高い金利を武器に、
海外から資金を導入し、
移民導入や資源輸出を通じて、
それ以上の経済成長を実現することによって、
運営されてきた国です。
しかし、金利が高いことは、
通貨にとって、両刃の剣でもあります。
世界的に経済状況が良く、
お金がジャブジャブ余り、かつ豪州やNZの資源や一次産品を、
中国やインドがしこたま買ってくれるようであれば、
高金利の豪州やNZに、お金が集まり、
豪ドルやNZドルの価値も上がります。
しかし、一旦、世界経済が冷え込むと、
逆の流れになります。
豪ドルやNZドルから、
資金が一気に引き上げられることにもなりかねません。
米ドルや日本円などと違って、
豪ドルやNZドルの流通量など、タカが知れてますから、
下手したら、わずか数週間で、
諸外国通貨に対して10~20%の暴落、なんてこともありえます。
豪州などとは文脈を異にしますが、
工業立国を目指す新興国の通貨も、
動きとしては似たようなものです。
中国みたいな、巨大な人口・市場を持つ国は別として、
多くの新興国は、海外から資金や技術を導入して、
高い効率で回すことで、経済成長を実現しています。
日本の近くでいえば、例えば韓国ウォンも、
ハイリスク通貨と見なされます。
マレーシア、タイ、フィリピンなど、
東南アジアの多くの新興国の通貨がハイリスクであることは、
言わずもがなですね。
【2.有事にはローリスク通貨】
一方、ローリスク(リスク回避)通貨ですが、
こちらは主に、
定番の工業先進国(日本、米国、欧州各国)の通貨が該当します。
多くは成熟した低成長国で金利も低いので、
世界経済が好調な時には、あまり注目されませんが、
昨今のような世界経済の変調・落ち込みの時期に、
資金の逃避先として、選ばれることが多い通貨です。
以前は「有事のドル買い」と言われたほど、
米ドルが安定感を誇っていた時期がありますが、
昨今は米国経済がおかしくなり、
消去法的に「円買い」、「スイスフラン買い」が目立ってきました。
この、リスク回避通貨ですが、
多くの問題をはらんでいます。
現実問題、リスク回避通貨になりたがる国は、
地球上に、ほとんど存在しません。
それもそのはず、
世界中が不況で苦しんでいる時に、
自国通貨が高くなって、
輸出競争力が弱くなっては、たまらない。
不況の時に円高になると、
日本国内の雇用が厳しくなるのは事実で、
円高介入してわざわざ通貨を弱くするのも、
その理由からです。
ですので、ババ抜きじゃないけど、
「リスク回避通貨」になるのを避ける動きが、
先進国のなかで、起こっています。
昨今の経済状況で、資金退避先として米ドルを買える人は少ない。
危機の続くユーロを買える人は、さらに限られる。
そこで欧州では、スイスフランや、
意外にもチェココルナなどが、退避通貨として機能してきましたが、
その結果、今年5~7月のスイスは、
円高を超えるフラン高に見舞われ、
大変な状況になりました。
スイスは、周りを全てユーロ圏諸国に囲まれ、
自国製品の輸出先もほとんどがユーロ圏。
しかし肝心のユーロは下がり、
スイスフランだけ上がれば輸出などできません。
しかもスイスは、
多国籍企業の本社所在地として選ばれるような国、
フラン高のせいでスイスでのオペレーションに割高感が出てくれば、
企業誘致もままなりません。
切羽詰まったスイスは、荒療治に出ました。
メタメタな状態なユーロと自国通貨を実質上、
連動(ペッグ)させるという措置に踏み切ったのです。
そのおかげで、
スイスフラン高は強制的に修正されましたが、
この選択が、スイスにとって吉と出るのか凶と出るのかは、
歴史の審判を待たねばなりません。
いずれにせよ、
スイスがこんな状態に陥ったことにより、
いま世界で、リスク退避通貨として機能するのは、
日本円くらいしかなくなりました。
厳密にいえば、
「本命=日本、対抗=米国」でしょうか(欧州通貨買えないから・・・)。
世界経済がこの調子で推移する限り、
円高は当面、続くでしょう。
日本の震災ダメージと、
経済・財政状況の厳しさは、皆が知っていますが、
日本の場合、
危機が何らかのかたちで顕在化するのが早くても数年後であり、
それに比べて、
「いま、お尻に火がついている」欧州経済の問題がクローズアップされ、
その結果、消去法的に円が買われるのは、仕方ないことでしょうね。
(次回につづきます。)
(次回につづく)